[ ロボット ]
(2017/7/30 05:00)
ロボカップ国際大会の決勝戦が30日に開かれる。サッカーでは千葉工業大学の「CITBrains」が小型ヒューマノイド部門の準決勝に進出、中国チームと対戦する。生活支援ロボが競う@ホームでは九州工業大学の「Hibikino-Musashi@Home SPL」と玉川大学などの「eR@sers」がDSP部門の決勝に進んだ。災害対応ロボが競うレスキューで京都大学の「Shinobi」が2位にランクイン。タイやイランの4チームと決勝戦で競う。
ロボカップサッカーは小型ヒューマノイド部門で千葉工大がファイナリストに残った。フランスとインドネシア、中国と千葉工大が準決勝に進む。小型ヒューマノイド部門では自作した背丈が30-90cmのヒト型ロボが4対4でサッカーをする。まずは芝の上を二足歩行することが基本だ。大会ごとに芝の長さや柔らかさが微妙に変わるため、歩行制御を微調整して歩行を安定させる。ファイナリストはみな二足歩行で移動はできる。千葉工大の強みは安定してサッカーができることだ。ロボットに小型GPUを搭載。ディープラーニング(深層学習)でボールやゴール、フィールドのラインを認識させた。千葉工大の入江清上席研究員は「全体的な安定性が強み。上位4チームの中では歩く速度は速くない。安定性を重視した」と説明する。ボール認識や歩行の安定性を高めて、「1台でも多く、フィールドに立たせて、隙を突いてゴールを狙う」と説明する。
ソフトバンクの小型ヒューマノイド「nao」を使う標準プラット-フォーム部門では下位リーグの準決勝に愛知県立大と大阪大学の2チームが進出する。この部門はnao単体が情報を処理するため計算資源が限られ、ボール認識や自己位置推定が難しかった。そのため連携プレーというよりは、単独ドリブルからのシュートが多くなる。昨年の優勝チームがパスを実現しているため、他のチームが連携プレーができるか注目される。
小型部門では箱のようなロボットが鮮やかな連携プレーを見せている。日本チームはベスト4には入れなかったが5-8位決定に登場する。ボールの速度は人間を超えており、バウンドパスで相手の頭を越えさせたり、ゆらゆらフェイントのような動きを見せたりと多彩なプレーが見られる。
生活支援ロボが競う@ホームではDSP部門の決勝戦は日本チーム同士の対戦になった。九工大の「Hibikino-Musashi@Home SPL」と、玉川大と国立情報学研究所、情報通信研究機構の「eR@sers」が対決する。大会では九工大が断トツの1位に輝いた。2位の「eR@sers」に対して1.5倍の点を取った。@ホームは当たり前のように深層学習が使われている。九工大の田向権准教授は「深層学習を使っていないチームはないはず。認識処理の重たい計算をクラウドでやるか、ロボットでやるかが各チームの戦略に現れている」と説明する。DSPではトヨタ自動車の「HSR」を標準機として使い、日常生活の中でお手伝いさせる。そのためには人の言葉や仕草、日用品を認識する必要がある。ただHSRの計算能力だけでは深層学習を回すことは難しい。人の言葉を聞き分ける音声認識はクラウド、人やモノを見分ける画像認識はロボットなど上手く使い分けたチームの点数を伸ばした。
@ホームではソフトバンクの「ペッパー」を標準機とするSSP部門ではソウル大の「AUPAIR」が断トツの成績を出している。各チームが課題の難しさに苦戦する中、ペッパーで人を案内できたのはソウル大だけだ。
インダストリーのロジスティクス部門では独アーヘン工科大が抜きんでている。この部門では工場でのロボット活用をイメージしている。工場の生産機械(FA)の間を3台のロボットが行き来して部品を受け渡し工程をつないでいく。3台の役割分担が上手くできると得点を伸びる。3台がリアルタイムに通信する必要があるが、会場では無線が飛び交うため各チームは苦戦している。別の競技や観客が大量のデータが送られ、無線帯域をくってしまうと競技中のロボット同士が通信できなくなる。2位のスイスチームも無線通信で苦労している。決勝戦が面白い試合になるかどうかは、観客を含めてみなが無線端末を切って競技の環境を整えられるかどうかにかかっている。
レスキューでは1位がタイの「iRap」で2位に京大「Shinobi」がランクインした。3位と4位はイランの「MRL」と「YRA」。iRapが抜きんでていて2-4位はあまり差がない。レスキューでは災害対応の機能を測るため、階段や砂、小石の道やガタガタの坂を何往復も走り込む。ロボットが段差に突入する度に衝撃が走り、機体は激しく消耗する。コースが壊れるのではないかと思うくらいの激しさだ。だが激しい運動を何度も繰り返すことで、現場で壊れないロボットが開発される。
(2017/7/30 05:00)