[ オピニオン ]
(2017/8/24 05:00)
「普通の会社では絶対にありえないことがこの会社では起きている」―。東京電力ホールディングスの会長に就任した川村隆さんの言葉が印象的だった。社内の縦割り意識が情報共有を妨げて閉塞(へいそく)感を生み出しているという。
日立製作所時代、納入業者として東電とつきあってきた川村さんの分析は厳しい。会長になったばかりの門外漢の批判だなどと聞き捨てにしてはいけない。しかし「普通の会社ならありえない」のは、なにかと批判の矢面に立ちやすい東電だけなのか。
例えば、米国型の企業統治を“普通”だとすれば、多くの日本企業が、なんらかの普通でない面を持ち合わせている。川村さんは以前から「日本の企業は稼いで社会に還元する意識が低い」と話しているが、これも日立を含む産業界全体への苦言だ。
グローバル競争は“普通”の商品やサービスでは勝ち残れない。だが経営者や従業員の順法意識や倫理観が“普通”から逸脱したら競争の土俵から転落する。働き方改革も“普通”のビジネスマン像に変革を迫る。
企業が“普通”であり続けるためには、常に自社を俯瞰(ふかん)する目が必要だ。川村さんの言葉は、経営者が自らに課した厳しさの現れと受け止めるべきなのだろう。
(2017/8/24 05:00)