[ ICT ]
(2017/8/25 18:30)
(ブルームバーグ)米アップルでスマートホーム技術をリードエンジニアとして担当したアンドルー・バークス氏は、スマートフォン経由で管理できる温度自動調節器やライトなどを扱う起業家と多くの時間を過ごしたが、ある日、サンフランシスコの新興企業でデジタル式ドアロックを手掛けるオットーを訪れると衝撃を受け、間もなく同社のチームに加わった。
バークス氏は「アップルは大好きな会社で、辞めるのは本当に厳しい決断だった」と振り返る。「でも逃したくないチャンスだった」と言う。同氏が加わったチームは一時期、元アップル社員が大半を占めていた。
あれから2年。オットーでは、同社の企業名を冠したデジタルロック発表の準備が整った。大きさは競合製品の半分で、色は黒とゴールド、シルバー。アップルのスマホ「iPhone(アイフォーン)」のブルートゥース接続を使って解除が可能なこのドアロックは、価格もアップル製品並みだ。700ドル(約7万7000円)と、通常のドアロックの3倍以上する。
家庭内の電化製品などを遠隔管理・操作する技術にアップルやアマゾン・ドット・コム、グーグル、サムスン電子が資源を投じる中、デジタルロックの人気は高まるとみられている。
オットーのチームが鍵そのものを作り替えようと決断したのは、数百年も形をほぼ変えることのなかった鍵のデザインを改良するとともに、安全性とプライバシーも改善できると考えたからだ。同社のデジタルロックには従来型の鍵はなく、スマホに直接反応し、居住者が自宅に入る必要がある際にはブルートゥースを活用する。
アップルが安全性にこだわるように、オットーも暗号技術を駆使して不法侵入を防ぐ。もし、居住者がスマホを忘れたり電池切れした場合は、デジタルロックをドアノブのように回して4桁のコードを入れられるようになっている。
果たしてこのロックは売れ、オットーのチームは潤うだろうか。元アップル従業員らがこれまでに試みた先例は、あまりうまくいっていない。元社員数名で2014年に始めたパール・オートメーションは昨年、価格が500ドルの自動車用バックアップカメラを発売したが、売れ行きは鈍く、同社は今年6月に閉鎖を迫られた。アップルの元ソフトウエア責任者バートランド・サーレット氏が創立したアップゼアもまだまだだ。
オットーのロックで一番のハードルは価格だ。マーケティング責任者のウェンディ・ハリントン氏は700ドルのロックを作るつもりではなかったが、ただ単純に、質の良いロックはそれだけの価格になると語る。
そうかもしれない。だが、同程度の価格で、ドアの施錠解除以上のものをやってくれるミニコンピューターを手に入れて持ち歩くことができる。その製品の名称はアイフォーンだ。
(2017/8/25 18:30)