[ オピニオン ]
(2017/9/7 05:00)
旅館やホテルなどを含めた日本の観光施設は、基本的に短期滞在型のつくりになっている。訪日外国人旅行者のリピーターを増やすため、長期間滞在しても飽きのこない仕掛けを考えるべきではないか。
日本政府観光局によると、観光・レジャーを目的とした訪日外国人の平均宿泊数は2017年4―6月期で5・9泊。このうち韓国は3・0、台湾は4・9、中国は5・9など、アジアは1週間以内が大半だ。
これに対し、英国は14・5、ドイツは14・0、フランスは12・9、米国は9・8など、欧米は長期滞在型が多い。日本から遠く、休暇取得制度が進んでいる欧米とアジアの違いが滞在期間に影響しており、欧米人は1人当たりの旅行消費額が比較的多いのが特徴だ。
ここ数年、中国人観光客の「爆買い」が注目されたが、ここにきて急速に沈静化に向かっている。長期滞在型の欧米旅行客をリピーターとして取り込んでいかないと、訪日外国人の消費市場は増えないだろう。
長期間滞在しても飽きのこない仕掛けや工夫がされているのか、再考すべきだ。例えばJTBが外国人を対象に実施したアンケートによると、訪日旅行で利用したい宿泊施設は「旅館」が68%を占めた。日本の文化・伝統を感じさせる旅館への興味・関心が高いことが分かる。
ただ、現状で十分な受け入れ態勢を整備しているかというと疑問も残る。多言語による宿泊予約や案内態勢、日によって変わる食事内容、各種の体験型ツアーなど、訪日客が長期滞在して満足できる内容かどうか、改めて考える時期にきている。
東日本大震災で訪日外国人旅行者は11年に622万人に落ち込んだ。だが13年に初の1000万人超えを達成し、16年は2404万人と一気に激増した。政府は20年に4000万人の訪日客を目指している。
外国人旅行者の宿泊先は大都市圏から地方への分散が進んでおり、地方創生の観点から「産業」としての重要性も指摘されている。官民を挙げて取り組んでほしい。
(2017/9/7 05:00)