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【通商弘報】100%日本産米と手作りでニューヨーカーを魅了-おむすび権米衛の現地法人副社長らに聞く

(2017/10/12 05:00)

ニューヨーク発 

2017年10月11日 

おむすび権米衛は5月、マンハッタンのオフィス街、グランドセントラル駅から徒歩2分の場所に米国2号店をオープンした。平日のランチタイムにはショーケースの前に、日本人だけでなく米国人の常連客の列ができている。現地法人副社長の奥村智春氏、夫で統括マネジャーの奥村悟司氏、現地協力者の下城近雄氏に、米国進出の経緯を聞いた(8月11日)。 

コメ生産者と専属契約

日本国内で販売されているおむすび権米衛のおむすびは、1つ1つが手むすびで、これは米国でも変わらない。さらに、日本産米を100%使用しながら手頃な価格で提供している。レジの隣には日本の米生産農家のポスターが貼られており、まるで日本のおむすび権米衛にいるようだ。

同社は2011年から、ニュージャージー州にある日系スーパーのミツワが開催するイベントに年に2回出店。回を重ねるごとに順調に売り上げが伸び、2013年にミツワに1号店、2017年5月にはニューヨーク市内にある日系スーパー片桐に2号店をオープンした。同社はかねてブランディングや宣伝効果が高いニューヨークのマンハッタンで事業を展開したいと考えていたという。

日本と同じように、市販品の約1.5倍の大きさのおむすび1個を2~3ドル前後で、おむすび2個とから揚げ・卵・枝豆などが入った弁当セットを約8ドルで提供している。ニューヨーク店は、ランチメニューの平均価格が15ドルといわれるビジネス街にあるだけに、手頃な価格設定といえそうだ。これは、海外出荷用として北海道、秋田県、石川県の生産者と専属契約をすることでコメの価格を抑えるとともに、各生産者からローテーションで出荷してもらうことで安定供給できているからだという。その裏には「日本産のおいしいコメを米国の人たちにたくさん食べてもらいたい」「安定的に日本産米のおむすびを供給することで、日本の農業をサポートしていきたい」という強い思いがある。塩むすびについては、1個100円で販売する日本と同じように、米国でも1ドルで提供している。

精米したてのコメのおいしさを伝える

大きさや価格だけでなく、「おいしいコメ」にもこだわっている。使用されるコメは玄米のまま米国に輸出され、炊く前日あるいは当日に精米することにより、本来のおいしさが存分に引き出されているという。

販売商品は、日本でも定番のサケなどに加え、米国人向けに開発したスパイシーツナやスパイシーチキンなども評判が良いそうだ。健康志向の客層が多いニューヨーク店では、高菜・梅・昆布などの白米のおむすび以外にも玄米が人気で、1人平均して2~3個のおむすびを購入するという。

ニュージャージー店の客層は日本人が20~25%程度で、アジア系米国人が半数を占めている。一方、ニューヨーク店では日本人は25%程度と変わらないが、白人系米国人が50%を占めており、当初の予想以上にアジア系以外の人から受け入れられているという。「米国市場向けのメニューを開発したことに加え、昨今の日本食ブームが追い風の一因」と下城氏は語る。

輸送やスタッフ教育で試練も

日本の農家からコメを仕入れるため、米国への輸送面で問題が生じたことがあった。2016年にロサンゼルス港で起きた港湾労働者のストライキにより、供給が間に合いそうにない事態になった。空輸を検討したが、ギリギリのところでストライキが終わり、なんとか間に合ったそうだ。

スタッフ教育も一筋縄ではいかない。店頭に立つ米国人のパート社員同士が性格の違いなどでもめることがあった。また、手作りおむすびを安定して作れるようになるまでには個人差があり、数日~1カ月程度のトレーニング期間が必要だ。また、ニュージャージー店とニューヨーク店ではそれぞれの州の規制が適用されるため、温度管理などについて店舗ごとに異なる対応が必要であることも、米国展開の苦労の1つだという。

 

「今後はメニュー開発だけでなく、販売や宣伝方法も検討しながら、おむすびの販売数を増やしていきたい」と奥村夫妻は語る。同社は今後、日本で100店舗(現在45店舗)、マンハッタンでも100店舗、米国を含む海外で1,000店舗の展開を目指す。2017年秋にはフランスのパリに初出店する。

(沼田茂仁、デラコスタ葉子)

(米国)

(2017/10/12 05:00)

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