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[ 化学・金属・繊維 ]
(2017/11/11 05:00)
神戸製鋼所は10日、一連の検査データ改ざん問題について、各事業部門に対する経営の評価が収益に偏り、品質管理など生産現場の問題を把握しようとする姿勢が不十分だったとする原因究明結果を発表した。「経営自らが責任をもって、工場の困りごとを解決する姿勢を見せなかった」と分析。製造現場と経営側の意思疎通が希薄な実態が浮かんだ。外部の専門家による調査委員会が年内に別途まとめる原因調査の結果を踏まえ、関係者の処分を決める見通しだ。
川崎博也会長兼社長は10日の会見で「このような経営管理構造の改善を経営の最優先課題とし、不退転の覚悟で取り組みたい」と述べた。自身の進退については、外部調査委員会の意見も踏まえた最終的な再発防止策を年内にまとめた上で、検討する考えを示した。
川崎会長兼社長が委員長を務める社内調査委員会がまとめた原因調査報告によると、特に問題が多発したアルミニウム・銅事業部門では、収益に貢献するため、規格や品質、生産量などで顧客の要求を満たせるかどうかを確認しないまま、仕様書を取り交わした可能性もあるという。
また、品質保証を担う部署が品質管理の担当部署と同じ部内に置かれ、独立性が保たれていない例があるなど監査機能も欠けていたとし、「品質ガバナンス施策の取り組みが不足していたことは否めない」と結論づけた。
これらを踏まえた再発防止策として、取締役会の諮問機関「品質ガバナンス再構築検討委員会」を同日付で新設し、川崎会長兼社長が委員長となって統制機能の強化策を検討する。さらに全社レベルの品質監査を担う「品質監査部」を2018年1月に設置してチェック機能を強める。
ただ、経営トップと現場の意識の断絶という企業統治上、最も深刻な問題にどう踏み込み、意思疎通、意思統一を図るかは明確でなく、信頼回復に向けた再発防止の取り組みはまだ道半ばだ。
川崎会長兼社長と報道陣との主なやりとりは次の通り。
―品質軽視の風土が生まれたのは、いつごろと認識しているか。
「長きにわたり事業部門制を敷き、品質に関して各部門に権限を委譲してきた経緯がある。そうした歴史に鑑みると、かなり以前からということになる」
―社長自身も生産現場の出身。問題を知らなかったのか。
「鉄鋼部門の生産現場に長く身を置いたが、専門分野は機械設備で、建設や機械の保守、設備の改善が主。そういう観点では品質に接することがなかった」
―複数の元役員が不正を黙認していたとの報道があった。
「報道は認識している。今回の報告書のベースとなった社内調査を行う上で、過去・現役の管理職や現役員、元役員にヒアリングした。ただ社内調査は10月25日までで、26日から外部調査委員会に引き継がれた。今後の調査は外部調査委員会の報告を待ちたい」
―経営陣として何が足りなかったか。
「当社の経営の特徴である事業部門制が否定されるものではないと考えているが、経営として各工場の問題を把握し改善すべきだったと反省している。信頼回復には経営管理構造の是正と、困ったことを素直に言える職場風土にする改革が必須。今後これを経営の最優先課題とし、不退転の覚悟で取り組みたい」
―自身の経営責任や処分については。
「まだ51社・10%の納入先から安全確認をいただける状態になっていない。可及的速やかに100%に持っていく努力を私を筆頭にやらせていただきたい。今後、品質ガバナンス再構築検討委員会の委員長としてその構築に努め、12月末の外部調査委員会の報告をベースに最終的な当社としての対策をまとめる。私のリーダーシップのもと、それらを短期間に終え、経営責任はその後しかるべき段階で判断したい」
―いくつか原因がある中で最大の問題は何だったと考えるか。
「五つの原因のうちどれが支配的かは非常に難しい。あえて言うと、アルミ・銅部門では品質マネジメントが十分に機能していなかった。事業部門へ権限委譲を進めた結果、品質管理体制にばらつきが生じ、本社にもそのばらつきをチェックする機能がなかった。アルミ・銅部門はアルミの板や鋳鍛造部品、押出品、銅管など、独立した製品が工場ごとに作られている。その独立した中で人事が固定化され、品質に対する独自の誤った考えや認識が醸成されたと現時点で考えている」
(2017/11/11 05:00)