[ 政治・経済 ]
(2017/12/6 14:00)
F15搭載、射程900キロ超の空対地ミサイル
政府は5日、射程900キロ超の長距離巡航ミサイルの導入について検討に入った。表向きは離島防衛の強化を目的としているが、性能上は敵のミサイル発射基地などを攻撃することも可能な装備で、将来の敵基地攻撃能力保有への布石とする狙いもありそうだ。2018年度予算案に調査費を計上する方向で調整を進める。
長距離巡航ミサイルは、敵のレーダーで捕捉されない遠い場所から発射できる利点がある。政府は米国製の空対地ミサイル「JASSM-ER」などを候補としている。航空自衛隊のF15戦闘機に搭載するには改修が必要とされ、来年度以降に具体的な調査を行いたい考えだ。
政府高官は、沖縄県尖閣諸島などを念頭に「島しょ防衛に必要な装備だ」と強調する。ただ、射程900キロ超のミサイルを持てば、朝鮮半島に接近しなくても北朝鮮の核・ミサイル開発拠点を攻撃することも能力的には可能となる。
政府は敵基地攻撃能力保有について、憲法が認める自衛の範囲内で可能との見解を示してきたものの、「専守防衛」の観点から、政策判断として巡航ミサイルの保有はこれまで控えてきた。導入の検討が具体化すれば、憲法9条との整合性をめぐり国会などで議論となりそうだ。
安倍晋三首相は先月の参院本会議で敵基地攻撃能力について「現実を踏まえたさまざまな検討を行っていく責任がある」と答弁。政府は防衛大綱の見直しや次期中期防衛力整備計画(19~23年度)の策定を通じて保有の検討を進めるとみられる。(時事)
巡航ミサイル「検討の責任ある」-官房長官
菅義偉官房長官は6日の記者会見で、長距離巡航ミサイル導入に向けた調査費の2018年度予算案への計上について「決定しているわけではない」としながらも、「安全保障環境は極めて厳しい。国民の命と平和な暮らしを守るために何をなすべきか、常に現実を踏まえ、さまざまな検討を行っていく責任が政府にはある」と述べた。
敵基地攻撃能力の保有につながるとの声が出ていることに関しては「敵基地攻撃能力は日米の役割分担の中で米国に依存している。今後とも基本的な役割分担を変更する考えはない」と述べ、懸念は当たらないと主張した。(時事)
(2017/12/6 14:00)