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(2017/12/23 07:00)
QCDの今日的課題
「企業」はモノを作り、売る。「顧客」はモノを買い、利用する。
この「企業」と「顧客」とのモノの売買、関係を、如何にマネジメントするか、長年マーケティングは腐心してきました。QCD(Quality,Cost,Delivery)は、モノの価値を顧客に訴求する上で重要視されていますが、昨今の商品販売においては、品質の過剰なアピール、購入量に応じた割引やセット価格など複雑な料金体系、また、安価な仕入価格と素早い納品を可能とする集中購買など、差別化戦略としてQCDの偏重が見られ、一方、「顧客」は企業のこの種の販売手法に対する懐疑心より、従来にも増して商品を吟味する傾向にあります。
もし、「One for all,all for one」の精神、つまり、「1社は全ての顧客のために、全ての企業は1人のために」というコンセプトがあれば、マーケティングを再創造できるのでは無いでしょうか?
「企業」と「顧客」関係の変遷
一昔前のローカル市場では、売り手と買い手は、顔も名前も知る中、売り手は1人ひとりの買い手の好みから懐具合、性格まで把握し、買い手にとって最適なQCDの商品を提案し、買い手も安心して購入していました。同時に買い手は、購入した商品のQCDに不満を抱いた場合、売り手にその改善を求めました。(売り手が限られているため、改善されないと買い手自身が困ります。)この理想的な関係が、グローバル市場の移行に伴い、機能しなくなりました。
品質面では、食品業界におけるトレーサビリティの導入やフェアトレードの提唱など、一部でサプライチェーンの透明性が確保されつつありますが、ローカル市場にあったQCD全体を通じた最適化は、グローバル市場で実現できていないのが現状です。
「企業」のマーケティングの理想は、(1)商品を売る(2)商品を利用して満足してもらう(3)商品を改善する(4)より良い商品を買ってもらう、という循環を構築することであり、「顧客」にとっての理想は、(1)商品を買う(2)商品を利用して満足する(3)より良い商品を求める(4)より良い商品が企業から買える、という循環を構築することです。
グローバル市場や成長市場では企業も顧客もプレイヤーが増えるため、当初は(1)が重視されますが、市場環境が成長、成熟、顧客ニーズが多用化する中では、(2)→(3)→(4)と重要性がシフトしていきます。
欧米諸国、日本等の成熟した市場では、企業と顧客が良い関係を構築し、その関係を維持、継続することがマーケティングの最重要戦略と位置づけられ、昨今では顧客満足から更に一歩踏み込んだユーザエクスペリエンスが重視されています。
ネット通販に見るマーケティングの先祖がえり?
ネット通販の成長が留まるところを知りません。当初は既存の対面販売を補完する販売形態と思われましたが、ITを駆使したCRMの充実により部分的に既存の対面販売以上のサービスクォリティを提供しつつあります。
商品特性、顧客属性により一概にどちらの販売形態が優位とは言えませんが、ネット通販の特徴として、顧客の購入行動分析を通じた顧客ごとの対応は、マーケティングの原点回帰の感があります。
販売形態の観点から、【表1】の「顧客起点マーケティングチェックシート」により、様々な商品におけるマーケティング活動の現状と課題、先祖がえり(?)の評価が可能です。
ブランドロイヤリティは、いかに顧客に最適な商品を提供するか、顧客にその商品の利用を通じて、最適であることを体験(ユーザエクスペリエンス)してもらうかにかかっています。
一人の顧客でさえ、生活環境、年齢などの変化により求める商品は同じではありません。一人の顧客のこの様な変化をも捕捉して、常に商品の価値を最大化すること、「One for all,all for one」のコンセプトによる「企業」と「顧客」関係を再創造するマーケティングが待望されます。
(『新製品情報』2015年9月号掲載)
(毎週土曜日掲載)
【著者紹介】
武道 誠芳
株式会社テンプロテクシー代表取締役
(マネジメントコンサルタント)
所属:(株)テンプロクシーにて、Web関連サービス、マーケティングサービス、ロボットビジネス等を展開
生年:1960年8月
出身:富山市八尾町
学歴:横浜市立大学商学部経済学科(1983年卒)
経歴:外資系コンピュータメーカー、システムコンサルティング会社、サイパン合弁事業への参画後、1996年11月、起業・独立
(2017/12/23 07:00)