[ 政治・経済 ]
(2018/2/17 18:30)
英国の国家犯罪対策庁(NCA)で国家サイバー犯罪局長などを歴任したサイバーセキュリティーの専門家、ジェイミー・サウンダーズ氏は、都内で開かれたサイバーセキュリティーに関する意見交換会で、日本のサイバーセキュリティーの課題について「ガバナンスやリスク管理の領域で、日本は英国から学べるところがある」と指摘した。サイバーセキュリティーは本来、経営陣が考えるべきであるにもかかわらず、日本ではIT部門が解決すべき課題とみなされがちという。その上で、英国がこうした課題に対して「手助けできることがあるはず」とし、今後、サイバーセキュリティー分野で日英両国が連携をさらに深めることを促した。
ラグビーW杯のサイバー攻撃対策などにも協力
サウンダーズ氏はこの分野での日本との協力関係を深めるため、2月半ばに来日。これまで日本の政府や産業界の関係者らとサイバーセキュリティーについて意見を交わしてきた。
「サイバーセキュリティーに関するテクノロジーの領域で日本が世界のリーダーであることは疑う余地がない」と評価。ただ、意見交換を通じて「サイバーセキュリティーをテクノロジーという観点からしか捉えていないことが気になった」とした。
日本では、2019年にラグビーW杯、20年に東京五輪と国際的な大規模イベントが相次ぎ、開催時期を狙ったサイバー攻撃への懸念も持ち上がっている。サウンダーズ氏がこうしたイベントのサイバー攻撃に対する戦略や計画を見たところ、とてもしっかりした内容だったという。
その上で、サウンダーズ氏は「今後、イベントが開かれるまでの時間で、策定した戦略や計画を実際にテストすることが重要。万が一、テクノロジーにトラブルなどが発生した場合のフォローアッププランなども含めた包括的な演習を行うべきと関係者にアドバイスした」とし、こうした動きに英国も協力する意欲を見せた。
サイバーセキュリティー分野の日英両国による連携をめぐっては、17年8月にメイ英首相が来日した際、安倍晋三首相と会談し、この分野での課題に連携して取り組むことをあらためて確認した。英国はサイバーセキュリティーの分野に先進的に取り組んでいる。
16年から5カ年のサイバーセキュリティ―国家戦略では、5年間で約2800億円(19億ポンド)を投じる計画。英政府通信本部(GCHQ)内に設置したサイバーセキュリティ―の専門知識を集中的に管理する「国家サイバーセキュリティ―センター(NCSC)」も、この一環だ。サウンダーズ氏は英国の国家犯罪対策庁(NCA)で国家サイバー犯罪局長のほか、機密情報局長などを歴任。英国大使館によると「サイバーセキュリティ―と機密情報分野の世界的な第一人者のひとり」。
(2018/2/17 18:30)