[ その他 ]
(2018/4/18 05:00)
ラジオ放送の価値向上
◆高精度デジタル方式FM同期放送送信機
日本通信機(神奈川県大和市)の「高精度デジタル方式FM同期放送送信機」は、複数の送信局が同じ周波数で放送する「FM同期放送」の課題を克服した。2016年4月、山口放送の長門―美祢局で国内初の高精度デジタル同期放送としての運用開始を皮切りに中国放送、ラジオ福島、福井放送などで導入が進む。送信局をまたいでもカーラジオの再チューニングが不要で聴取者の利便性が向上するほか、AM放送をFM放送に置き換える「FM補完放送」では周波数の割り当て逼迫(ひっぱく)の解消につながる。
FM放送は複数の局から同じ周波数を発射すると、電波が重なる等電界エリアでは局間の距離差による遅延時間が生じ、音質が低下する。局ごとに周波数を変える必要があった。同機は変調器の信号処理を全て高精度にデジタル処理することで、従来のアナログ型変調器では困難だった「差」を解消した。
14年6月、山口放送のFM同期放送のニーズを受けたNHKアイテックから共同開発を打診された。「聞いた瞬間は難しいと思った。でも地デジで培ったデジタル信号処理技術の可能性にかけた」(河野憲治取締役技師長)と振り返る。
同月、プロジェクト案件として着手。15年4月、試作したデジタル変調器で社内実験と山口放送、中国放送の協力でフィールド実験を開始した。しかし、フィールド実験ができるのは放送休止時間の月曜日の午前1―5時と限られた。電波測定車で対象エリアの受信電界と音声品質を観測して回った。「天気との闘い。大雪や暴風雨の時は恐怖だった」(岩下裕孝技術部主管部長)と今は笑えるが、河野技師長は「お客さまの熱意に応えよう」と開発メンバーをもり立てた。
約2年間、受信波形に目を凝らし、音質に耳をすました。実験と機器改良を重ね山口放送長門局が開局。その後も局が追加されるたびに新しい課題に立ち向かい、技術を磨いた。楡幸一社長は「超高精度な測定技術も自社開発。オンリーワン製品ができた。ラジオ放送の価値向上に技術で貢献したい」と社員の頑張りに胸を張る。
(相模支局長・石川暁史)
りそな中小企業振興財団と日刊工業新聞社が主催する「第30回中小企業優秀新技術・新製品賞」の上位表彰製品・ソフトを紹介する。
(2018/4/18 05:00)
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