[ オピニオン ]
(2018/4/27 05:00)
花鳥風月には無縁でも、季節を感じさせる場所がある。法務局の窓口もそのひとつ。陽春の3―4月は、社名変更や本社移転などの商業登記で行列ができる。大型連休明けには平穏になり、3月期決算企業の役員交代登記が集中する初夏に再びラッシュとなる。
登記は法治国家の根幹をなす制度。不動産登記などいくつかの種類があるが、企業や社団・財団などの法人は、すべて商業登記を基礎にする。とはいえ普通のビジネスシーンで、なじみがある人は限られよう。
専門的で分かりづらいだけでなく、制度が恐ろしく古いのである。登記官という専門職を全国に常駐させ、ルールを統一して公的な記録を残す。明治時代には多くの人手をかけてやるしかなかった。
商業登記で記録する実データの多くはテキストで数キロバイト以内。今日のネットワーク技術なら、全国一律のサービスが安価に構築できそうだ。絶対的登記事項の書式や漏れを人工知能でチェックする仕組みを用意すれば、登記官も司法書士も必要ない。ITのもたらす社会イノベーションには無限の可能性がある。
遠からずオンライン登記が一般化するだろう。そうなれば法務局から春の混雑がなくなり、季節を感じなくなるのかもしれない。
(2018/4/27 05:00)