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[ 科学技術・大学 ]
(2018/4/30 05:00)
東京大学地震研究所の田中宏幸教授らは、宇宙線「ミュオン」を使って火山内部の透視画像を得る装置の試作機を完成した。ミュオン検出に新方式を使い、ミュオンを受ける単位面積当たりのコストを、従来方式の10分の1以下に抑えられる。
鹿児島県の桜島で実証実験を始めており、新方式の有効性を確かめた後、実用化に向け大型装置の開発に着手する。桜島での観測結果は、2018年度中に無料公開し、火山研究への活用を促す。NECなどとの共同開発。
ミュオンは透過性が高く、岩盤も通り抜ける。高密度な部分は透過率が下がるため、物体内部の密度分布を可視化できる。
受光部を大面積化してより多くのミュオンを捉えれば、高解像度な画像を短時間で得られる。受光面積1平方メートルの場合、マグマ位置を把握できる解像度を得るのに1カ月かかるが、100平方メートルあれば8時間ですむ。だが、従来方式では装置コストが数十億円かかり、実現は困難だった。
完成した試作機は、ガスの電離を利用する方式を採用した。受光面積1平方メートル当たり500万円程度。ガスとミュオン間の作用を直接、電流として捉えるため光に変換する必要がなく効率が良い。
試作機の大きさは幅2×奥行き2×高さ2メートル程度で、受光面積は約2平方メートル。桜島観測で新方式の有効性を確認し、受光面積100平方メートルの装置の開発を目指す。
また、移動可能にするため、受光部を1平方メートル程度のユニットとし、現地で並列につなぎ運用するシステムを開発する。
桜島での観測結果は、ミュオンによる可視化技術研究のために7カ国の研究機関で組織した「ミュオグラファーズ」のサイトで公開する。
(2018/4/30 05:00)