[ オピニオン ]
(2018/8/2 05:00)
米国と中国の貿易摩擦がエスカレートする様相を呈している。米国のトランプ大統領が就任して以来、燻(くすぶ)り続けてきた”貿易戦争”の火種が燃え上がり始めた。トランプ政権の通商戦略は、巨大な経済力を背景として各国に個別通商協議を求めることにある。
日本は、2国間協議に引き込まれる前に、米国抜きの多国間協議を進展させることが重要だ。米国抜きで巨大経済圏が形成され、取引ルールが形成されれば、米国にプレッシャーを与えるのは間違いない。
米国と中国の貿易戦争は世界経済に打撃を与える。関税引き上げの対象が広範囲におよび、経済規模で圧倒的な世界の1位と2位の国の対立は計り知れない深刻な影響を及ぼすからだ。日本の貿易への波及も懸念されるものの、それ以上に為替や株式など金融市場への影響がより大きくなる危険性もある。
今回の米中の貿易戦争は、米国の狙いが大きく分けて二つある。一つは、「中国の覇権を阻む戦い」、もう一つは「貿易赤字を削減するための戦い」だ。米国は、輸入制限措置で中国の長期戦略である「中国製造2025」の品目を狙い撃ちにする一方で、鉄鋼・アルミニウム製品や自動車など、同盟国を含む国際社会を相手とした措置も同時に打ち出している。
トランプ大統領が主張するように、中国はフェアではない側面もある。今回はともに大幅引き上げになったものの、米国が輸入する自動車の関税はもともと2・5%であるのに、中国がかける関税は%だった。米国には自由に投資できるのに、中国に投資する企業は現地企業との合弁を求められる。
中国が発展途上だった頃であれば、そうしたハンディもやむを得ない。しかし、経済大国に成長した国には許されないと考えても不思議はない。貿易戦争を終結させるには、中国側の歩み寄りが必要だが、ハードルは高い。
こうした中、日本は多国間協議に活路を見いだすしかない。環太平洋連携協定(TPP)や東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などを迅速に進めることだ。(幕井梅芳)
(このコラムは執筆者個人の見解であり、日刊工業新聞社の主張と異なる場合があります)
(2018/8/2 05:00)