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[ 科学技術・大学 ]
(2018/8/28 05:00)
探査機「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」に10月下旬にも着陸する。課された重要ミッションは地質試料の回収。来年にかけて3回着陸し、爆薬を使う方法などで試料採取を試みるが、将来に向けて、古来より伝わる日本刀の技術を使った回収方法が研究されている。
初代はやぶさは2005年に小惑星「イトカワ」に着地したが、採取できたのは微粒子にとどまった。はやぶさ2は、爆薬を使って金属塊をリュウグウに撃ち込んでクレーターを作り、地下の物質を回収する方法などに取り組む予定だ。
一方、神奈川工科大の渡部武夫准教授(宇宙工学)らのグループは、将来の探査機用に独自の回収法の研究を進めている。パイプ状の部品(コアラー)を持った装置を小惑星表面に突き刺し、引き抜いて地層の重なりごと回収することを目指している。コアラー先端には、「少しでも深く突き刺し、より多くの試料を効率良く回収する」(渡部准教授)ため、日本刀と同じ素材・方法で作った刃先を取り付ける。
刃先は熊本県荒尾市の刀匠、松永源六郎さん(70)に依頼した。松永さんは有明海の砂浜で集めた砂鉄を炉で熱する古来のたたら製鉄法で鉄の塊を作り、何度もたたいて鍛錬して日本刀の材料となる玉鋼を製造。有明工業高等専門学校(福岡県大牟田市)でパイプ状に加工、研磨して刃先部分(直径25ミリ、長さ20~30ミリメートル)を作り、松永さんが焼き入れをして硬度を高める。
研究は2006年ごろ始まった。「深く突き刺すため鋭い刃先を」と探す中、日本刀にたどり着いた。渡部准教授は「硬く粘り強い素材特性と、鋭さ、切れ味の点で大きなメリットがある」と説明。「日本古来の伝統技術で宇宙探査に挑む点に、文化的意義も感じている」と強調する。
(2018/8/28 05:00)