[ オピニオン ]
(2018/9/18 05:00)
日本の教育者・思想家で国際親善にも尽くし、名著とされる『武士道』を書いた新渡戸稲造。武士道は英語で執筆されたため、世界的に愛読者は多いとされる。その新渡戸が「台湾砂糖の父」と呼ばれていたことを、今夏に訪れた台湾で初めて知った。
台湾南部の高雄市にある観光スポットの一つ「台湾糖業博物館」に新渡戸の胸像が置かれている。説明文に「台湾砂糖之父」と紹介する。
同施設は、日本統治時代の1900年初頭に建設された、近代的製糖工場跡を博物館にしたものだ。新渡戸は工場ができる前に、台湾を調査し産業強化のための製糖業に目をつけ、サトウキビの栽培改良や生産性を高める機械化などを提言。同工場を筆頭に提言が実践され、台湾製糖業の礎が作られたという。
同工場は約100年稼働、大型設備などもそのまま残されている。無人状態の工場内を歩きつつ、当時の活気あるモノづくりを想像した。
現在の台湾モノづくり企業には、シャープを子会社化した鴻海精密工業や、半導体受託生産大手の台湾積体電路製造(TSMC)などが台頭する。新渡戸ら日本人が製糖工場で実践したモノづくりの近代化は、台湾で後に他産業が勃興するきっかけとなったに違いない。
(2018/9/18 05:00)