[ オピニオン ]
(2018/9/17 05:00)
わが国は「みずほの国」と呼ばれる。日本最古の歴史書である『古事記』の中で、「豊葦原水穂国(とよあしはらのみずほのくに)」(稲穂が豊かに実り栄える国)と記されている。つまり「稲作」こそが日本の象徴そのもので、稲作がなければ社会も経済も文化も歴史も、まったく違ったものとなっていた。
稲作は大陸から輸入されたというのが定説だ。それを日本に定着させたのは「土木」の力だ。今日の「水田稲作」が日本で本格的に始まったのは弥生時代初期。それまでの焼き畑での稲作に比べて面積当たりの収穫量が大きく、連作や雑草による被害も少ないというメリットがあった。
一方で、その運営には田地の造営、貯水設備や水路などさまざまな灌漑(かんがい)設備の設置、畦畔(けいはん)で区切った画地の造成など、はるかに高度で大規模な「土木」を必要とした。
この土木事業によって、弥生人はより豊かで安定した食糧を獲得し、人口を急増させていく。縄文時代末期に約8万人だった人口は、弥生時代末期には約7倍の約59万人にまで膨らむ。
「土木」によって国力を高めてきて、「みずほの国」として大きく繁栄してきた。農業が国の根本であり、それを根底から変えたのは、「土木の力」であることは間違いない。
(2018/9/17 05:00)