[ 機械 ]
(2018/10/9 14:00)
放電加工は加工用電極と導電性の加工対象物(ワーク)との間に発生する放電現象を利用した金属加工技術。刃物を用いる切削加工と異なる非接触の除去加工なので、刃物では“歯が立たない”非常に硬いワークにも適用できる。さらに、刃物を押し当てないので微細な形状であってもワークを壊さずに加工できる。金型や精密部品の加工になくてはならない技術として、高品質・高機能製品の生産を支えている。
放電加工は電極の形状を転写する形彫り放電加工、電極にワイヤを用いるワイヤ放電加工が一般的だ。それぞれ形彫り放電加工機、ワイヤ放電加工機が用いられる。効率・品質の良い放電のため、電圧制御、電極とワークの間隔の制御などが不可欠だが、同時に、消耗品である電極の材料や形状の良しあしが加工を左右する。
形彫り放電加工の加工電極には銅、グラファイト、銅―タングステンなどが用いられる。グラファイトは電極を加工する際の被削性が良好だが大量の粉塵が発生するので、防塵対策を備えたグラファイト加工専用機が用いられる。
核デブリをサンプリングする装置(試作機)。下部の円筒内部に一回り小さな円筒状電極を備える
ワイヤ放電加工はワイヤを電極として用い、ワークを切断する。放電によってワイヤが消耗するので、電極ワイヤを連続的に供給・巻き取りし、連続加工を可能にしている。電極ワイヤには引っ張り強さや導電率などの特性にバラつきがないこと、ねじれなどのくせがないこと、線径精度が高いことなどが求められる。
放電加工は非接触の除去加工なので、通常の切削加工では難しい素材を加工できることがいちばんの特徴だ。生産技術としての放電加工は通常、絶縁性の加工液に浸した導電体のワークを加工する。しかし、技術としては絶縁体の放電加工や、水中放電加工、気中放電加工なども開発されている。
東京都立産業技術高等専門学校の吉田政弘教授は福島第一原子力発電所の廃炉作業で必要な燃料デブリのサンプリングに絶縁体放電加工を応用した技術開発に取り組んでいる。燃料デブリは酸化ジルコニア(ZrO2)、酸化ウラン(UO2)、炭化ホウ素(ボロンカーバイド、B4C)などが形成されていると考えられている。とりわけB4Cは非常に硬い物質で、燃料デブリ中にB4Cがあると、切削によるサンプリングが困難になる。放電加工であればきわめて硬いB4Cにも対応できるという。
8月下旬に試作機(写真)を発表した吉田教授は「デブリの組成や状況がどうであっても、同じ装置で対応できる。放電加工が廃炉作業に貢献できる」と手応えを語る。
(2018/10/9 14:00)