[ オピニオン ]
(2018/11/23 05:00)
神奈川県大磯町に集積する明治期の政治家の邸宅地が一般公開され、訪れる機会に恵まれた。明治時代、医師で政治家だった松本順が海水浴の効能を広め、明治18年(1885)に日本で初めての海水浴場を開設。同20年には東海道線の大磯駅が開業した。
その後、総理大臣として活躍した伊藤博文など8人の総理経験者が建物を所有し、明治政界の要人が集まり、別荘や邸宅を築いたことから「明治政界の奥座敷」と呼ばれた。
今回公開したのは、大隈重信と陸奥宗光が19世紀末に建てた別荘などで12月末までの期間限定だ。印象的だったのは、伊藤、大隈、陸奥の3人の奥さんに関するガイドさんの話だ。
伊藤の妻の梅子は、津田梅子から英語を学び、英語で手紙も書けるまでになった努力家。大隈の妻の綾子は、出世していく夫の秘書役をこなし、番頭のように振るまった。また、陸奥の妻の亮子は『鹿鳴館の華』と呼ばれた美貌の持ち主。英語のほか、文学や歴史、テーブルマナーまで猛勉強した。
行き届いた世話だったり、行動を共にしたり、美貌を生かす外交だったりと形は違う。共通しているのは、献身的に寄り添う気持ちだ。その支えがなくては、日本の政治は成立しなかった。
(2018/11/23 05:00)