(2019/3/20 00:00)
食品加工メーカーのトオカツフーズ(横浜市港北区)は、千葉柏工場に製造倉庫内の材料をどこにでも置けるフリーロケーション管理を導入。日々の棚卸しを不要とし、保管スペースの有効利用やピッキングのしやすさなどで効果を上げている。今後、各拠点に順次導入し、全国18のすべての拠点で実施する計画だ。フリーロケーションによる商品在庫管理はネット通販やアパレル、化学業界などで広がりを見せているが、食品加工メーカーでの導入は珍しく、注目されそうだ。
情報管理の先覚企業
トオカツフーズは主にコンビニエンスストア向けの弁当やおにぎり、サンドイッチなど調理済み食品を製造販売する。業界では情報管理の先覚企業として知られ、2007年にはハンディ端末とバーコードスキャナーを活用し、入荷日や賞味期限を管理する入荷在庫管理システムを構築した。
当時としては画期的なシステムであったが、その後、商品の改廃点数が増加し、使用材料の在庫量の変動が激しくなるにつれて問題が生じた。原因は材料を固定ロケーションで管理していたことにある。
材料の多品種化に伴い保管スペースが不足。また、必要な材料の保管場所を探すのに手問取っていた。作業の煩雑さに加え、作業者が材料の保管場所を覚えていることが災いし、出庫処理を行わないまま、勝手に材料を持ち出してしまうことも日常化していた。
出庫量が分からないと材料発注ができないため毎日、棚卸しをせざるを得ない。棚卸しには平均で3.8人、1.5時間を要した。年間240日換算で1拠点当たり1368時間を費やしていたことになる。
固定方式からフリー方式へ
これらを解決する手段として着目したのがフリーロケーション管理だ。在庫の位置をあらかじめ決めて管理する固定ロケーション管理は、作業者からすれば、同じ在庫が常に同じ場所にあるので、一見分かりやすい。ただし、売上げや生産量が頻繁に変動して在庫の増減が大きいと、棚が空いてしまったり、逆に不足したりする。
これに対し、フリーロケーション管理は在庫の種類を問わず倉庫内の空いている場所に置けるため、倉庫の保管効率が向上する。固定ロケーションでは商品改廃が発生すると棚割りを見直すことが必要だが、フリーロケーションには棚割りがない。コンピューターを活用して棚番号とロット番号を紐づけし、保管場所を管理するのが特徴だ。
例えば、作業者がポテトサラダを5袋出庫する際、旧システムでは払い出し一覧表を見て、ポテトサラダがまとめて置かれている棚割りの場所へ行き、取り出した。これに対し新システムは「1-3の棚から1袋」「4-1の棚から4袋」といった具合に、コンピューターの指示通りに取り出すだけで、古いものから順に5袋取り出すことができる。
日々の棚卸し不要 ミスも撲滅
新システムでは、コンピューターで出庫量を正確に管理できるので、在庫管理の精度が向上し、毎日棚卸しをしなくても材料の適性量発注が半ば自動的に行えるようになった。管理者は在庫状況をリアルタイムで把握でき、位置情報も管理できる。また、システム側から出庫指示を出すので、材料を取り間違えるミスもなくなった。
「フリーロケーション管理はわれわれの業界では先例がなく、当初は不安だった。ITサービス会社の日立システムズに相談した結果、当社の業態に最適であることが分かり、自信を深めた」(トオカツフーズ)。
システム構築に要した期間は6カ月と短い。これは、見かけは大きく変わっても、ゼロからつくり上げたわけではなく、データベースをはじめ、旧システムの資産が継承できたためである。
旧システムの構築から携わっている日立システムズでは、トオカツフーズの業務形態、さらには倉庫業務を熟知したエンジニアに今回のシステム構築を担わせており、トオカツフーズ側も「安心して任せることができた」という。
日立システムズでは今後も最小の投資で最大の効果を上げることを目標に、現場のデジタライゼーションを支援していく考えだ。
(2019/3/20 00:00)