[ その他 ]
(2019/5/1 05:00)
企業の知財活用をサポート 市場拡大に対応、特許調査業務効率化
データベース より使いやすく
新興国市場の需要拡大、情報技術の進歩、オープンイノベーションの進展など、企業を取り巻く環境は大きく変化している。企業はこうした環境変化に合わせて知財戦略を策定する必要がある。企業による知財活用の取り組みを下支えし、新たな価値を提供するのが、特許情報提供サービス各社の役割だ。主要各社の動向を探る。
海外の商標も一括検索 必要な項目まとめ設計
日本パテントデータサービス(JPDS、東京都港区)は2018年1月に商標の検索サービス「ブランドマークサーチ」を始めた。同社は特許データベース(DB)を提供しており、5割以上のシェアを持つ。これまで特許DB内にあった商標のDBを単独で立ち上げた。商標専用のため、商標調査に必要な項目だけをまとめ、使いやすく設計されている。
同サービスの大きな特徴は料金が安いこと。1IDにつき月額固定5000円の使い放題だ。料金を安くしてユーザーを増やすことで、コストダウンを図っている。
19年1月から米国特許商標庁に出願された商標も検索できるようになった。5月には、EU圏内とマドリッドプロトコル加盟国に出願された商標もDBに収録する予定だ。仲田正利社長は「いずれ世界130カ国の商標をDBに収録する」と話す。
コンセプト基に商標調査
18年夏、クラシエフーズに新たなヒット商品が生まれた。粉と水を混ぜて、手でつかめるジュースの玉が作れる「つかめる! ふしぎ玉」である。同製品のコンセプトは「液体を手に持てる、不思議な実験体験ができる」菓子。
マーケティング室の深澤翼係長は「コンセプトが決まったら商標調査を行う」という。今回、深澤係長が簡易的な調査をしたところ、コンセプトのキーワードとなる言葉が他社の商標権を侵害する可能性は低かったという。「商標調査の段階で他社が類似する商標を持っている場合は早めに出願する」(深澤係長)が、今回は出願せずに商品開発を始めた。
商品開発と並行して商品名の候補を五つに絞り、子どもに対するアンケートによって商品名が決められた。クラシエHDの知的財産権センターがクラシエフーズから本格的な商標調査を依頼されたのは、17年12月。その後、商品名である「ふしぎはっけん」「つかめる! ふしぎ玉」、訴求ワードとして「ふしぎ玉」「ぷるぷる実験」が出願された。
同HDでは、商標調査にJPDSのブランドマークサーチを活用している。同サービスの導入前は工業所有権情報・研修館が提供するJ-PlatPat(特許情報プラットフォーム)や評価ツールなど複数のツールを併用していたが、導入後は一本化により業務効率が上がったという。
また、知的財産権センター商標部門の松岡久夫課長は「月額5000円の固定料金制で、加算を気にせず調査できるのが大きなメリット」と話す。今後は事業会社でも同サービスの導入を進めたいという。商品開発の担当者が自身で商標調査できれば、開発のスピードも速まる。
松岡課長は各事業会社の導入について「HDの知的財産権センターの業務を効率化できる上、商品開発担当者の自分で検索したいというニーズにも対応できるのでは」と期待を寄せる。
AIで検索機能向上 内容 近い順に並び替え
NRIサイバーパテント(東京都千代田区)は18年11月、特許情報サービス「サイバーパテントデスク」に人工知能(AI)を活用して検索結果を並べ替える機能を追加した。
検索した特許の一覧に対して、探している内容に近い文献には「近い文献」マーク、遠い文献には「遠い文献」マークをクリックすると、それを教師データとしてAIが学習し、探している内容に近い順に一覧を並び替える。
選択した文献だけを判断するのではなく、その文献に類似する内容のものを判断して並び替えする。並び替えた後に精度向上のため、再度並び替えを行うこともできる。これにより検索ノイズを排除でき、効率よく検索できる。
高野誠司社長は「障害特許を無効化するための資料も見つかりやすい」と話す。無効にしたい特許に近い順で並び替えを行い、無効にしたい特許よりも前に出願されたものが見つかれば、先行技術の存在を特許庁に示すことができる。現在、近い順に並び替えできるのは日本の特許のみだが、「今後は米国の特許にも適用する」(高野社長)という。
【業界展望台】発明の日特集は、全7回の連載です
(2019/5/1 05:00)