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優れた特性を生かす フッ素樹脂の成形・加工

(2019/6/6 05:00)

業界展望台

 フッ素樹脂は剛性は決して高くないが、耐薬品性、耐熱性、電気絶縁性、低摩擦性・非粘着性などは樹脂素材の中でもトップクラスの性能を有する。チューブ、配管・タンク類のコーティングやライニング、シール材、薬品容器など、他の樹脂ではまねのできない用途で活躍している。2018年、フッ素樹脂製品の市場は空前の好況だった半導体産業向けが需要を大きく伸ばし、過去最高の実績を残した。

半導体好調で需要増

18年、過去最高を記録

 原料フッ素樹脂の国内生産量は17年に初めて3万トンを超え、18年はさらに増加し3万886トンだった。また国内出荷量3万2082トン、国内出荷額938億円、輸入額239億円、輸出額595億円、内需582億円はいずれも過去最高を記録した。

 フッ素樹脂製品の主要な用途である半導体産業向けが非常に好調だったことが背景にある。フッ素樹脂製品の出荷動向を日本弗素樹脂工業会会員統計でみると、18年の総出荷額は前年比117億円増の1085億円。うち半導体関連は同82億円増の394億円で、実績拡大に大きく貢献ししている。

  • 原料フッ素樹脂の国内出荷動向

 フッ素樹脂は分子構造に非常に強固な炭素―フッ素(C-F)結合を持つため、耐薬品性、耐熱性、電気的特性がきわめて優れている。代表的なフッ素樹脂が四フッ化エチレン樹脂(PTFE)だ。

 PTFEの連続最高使用温度は260度C。一方、低温側はマイナス100度Cでも長時間にわたって使用できる。融点は327度Cで、これ以上の温度ではゴム状の弾性体となる。流動性がないため、射出成形はできない。

 先日、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(POPs条約)の締約国会議でパーフルオロオクタン酸(PFOA)が規制対象となった。これによって日本でも国内法の改定作業が始められる。PFOAはかつてPTFEの乳化剤として使用されていた。国内の原料樹脂メーカー各社はすでにPFOA不使用化を完了しているため、この点では影響はほぼ生じないとみられる。

射出成形の可能性広がる

 フッ素樹脂の優れた特性はコーティングやフイルム、チューブだけでなく、厳しい環境で使用される成形品にも生かされている。可能なら量産性に優れた射出成形で成形したい。しかしフッ素樹脂を代表するPTFEは射出成形はできない。

 そこでテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)といった射出成形や押し出し成形など、溶融加工、成形ができるフッ素樹脂が開発された。

 フッ素樹脂の射出成形においては、樹脂が溶融した状態は汎用エンジニアリングプラスチックよりも高温で、なおかつ激しい腐食性雰囲気になる。そのためスクリューなど成形機部品には耐食性に優れたニッケル合金が使用される。ニッケル合金は高温下での耐酸化性に優れる半面、強度が低いため、荷重や圧力が制限される。

 高い生産性、複雑形状の一体成形といった射出成形のメリットを十分に生かすには、射出圧力の高圧化が欠かせない。最近は高耐食かつ高強度というニーズに応える製品も登場しており、フッ素樹脂製品の射出成形がより検討しやすくなってきた。

(2019/6/6 05:00)

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