[ オピニオン ]
(2019/6/21 05:00)
2017年の夏、世間を騒がせていたのがヒアリ。6月中旬に兵庫県下で初めて見つかり、各地に飛び火するように発見の報が続いた。毒を持ち、刺されると激痛とともに死に至るとされた外来種のアリだ。
騒動から2年。報道を見聞きすることは激減した。しかし環境省の調査によれば、累計確認数は1万匹に近い。19年に入っても見つかっている。危険性がなくなったわけではない。
「野生化し、定着させてはならない」と、警鐘を鳴らすのは沖縄科学技術大学院大学の吉村正志博士。ヒアリ対策の専門家で、琉球大学と京都大学、国立環境研究所とともに新たな国の対策事業に参画している。
刺されても必ず死ぬわけではないとの情報もあるが「体質によっては死に至る。死亡例がある以上、定着すれば社会的コストをかける必要が出てくる」と指摘する。日常的な対策が必須となれば、作業効率低下など産業界への影響も考えられる。
外来種の防除には市民や関係機関との連携が重要。「風化させない一方、いたずらに騒がずリスクを正しく認識できるよう、研究者とメディアは共同戦線を張るべきだ」と吉村博士。ヒアリを止めつつ、その熱が“喉元”を過ぎない枠組みが社会に求められている。
(2019/6/21 05:00)