[ オピニオン ]
(2019/6/20 05:00)
郷里である新潟県村上市沖に浮かぶ粟島は1964年の新潟地震以来、稲作ができなくなった。震源に近く、震災によって周囲23キロメートルの島全体が盛り上がり、水源が枯れてしまったためだ。島の港には隆起の形跡を残す岩があり、地形を変えた震災の威力を実感できる。
18日夜、新潟と山形の県境付近を震源とする地震が発生した。粟島にも津波が到達したが、幸いにも小規模で大きな被害は出なかった。万が一に備え、島のフェリーを沖に避難させたという。
震度6強の揺れに見舞われた村上市内では高台に避難した人が多かった。家族や知人に連絡をとると「余震がなくて安心した」「棚からモノが落ちるようなこともなかった」と、こちらが拍子抜けするほど冷静だった。
地震発生直後の落ち着いた行動を伝え聞きするにつれ、崩れた塀や斜面を繰り返し放映するテレビのワイドショーに違和感を覚える。けがや家屋に被害が出た方がいたにせよ、いささか過剰では…。
防災への意識を高めることはメディアの役割だ。地方には高齢者、離島や山間部に暮らす方も多い。これからの季節、豪雨による水害も心配される。災害の姿を、住民が“わがこと”として感じられるようにありたい。
(2019/6/20 05:00)