[ オピニオン ]
(2019/6/24 05:00)
微小粒子状物質「PM2・5」は、工場の煤煙や自動車排ガスなど燃焼によるもの、火山や土壌など自然起源のものなどさまざまな発生源がある。吸い込むと呼吸器系などの疾患につながる恐れがある。
日本南方海域の西部太平洋亜熱帯域は、植物プランクトンの成長に欠かせない窒素化合物が極めて少ないとされていた。植物プランクトンは海洋中の食物連鎖の出発点で、これが少ないと魚の量も少なく、この海域は“海の砂漠”と言われる。
ところが、海洋研究開発機構の竹谷文一主任研究員らが大気による微小物質輸送と海洋低次生態系のモデルを統合し調べたところ、PM2・5に含まれる窒素化合物が表層の植物プランクトンの栄養となり、植物プランクトンの量は従来の想定の年平均2・3倍になることが分かった。
栄養は海洋の中下層から上がってくると考えられていたが、この研究で、空からも栄養が落ちてくることが明らかになった。この結果は衛星データ解析とも整合するという。
この海域で植物プランクトンが増えれば、食物連鎖で魚も増え“海の砂漠”は“海の畑”に変わるのだろう。とはいえ、PM2・5は人にとっては厄介者、できれば全部海に落ちてくれればよいのだが…。
(2019/6/24 05:00)