[ 機械 ]
(2019/7/2 11:00)
車部品量産化に対応
自動車部品の成形で、超大型トランスファープレスから中大型機によるタンデムプレスラインへの置き換えが進んでいる。自動車業界の過酷な要求に呼応するもので、タンデム化により世界同時立ち上げを可能にするほか、熟練者による繊細な金型調整要らずで量産しやすくなる。さらに導入費用を抑え、設置後のライン移設の自由度が高まるなど利点は多い。課題だった生産性はサーボプレス、協調制御の進化によりトランスファーと遜色のない水準に高まった。
世界同時立ち上げ可能に
もうトランスファーは購入しない―。自動車部品世界大手は、脱トランスファープレスを宣言したという。同社は海外の工場の多くにトランスファープレスを持つが、今後はトランスファーに代わり、タンデムプレスラインを設備する方針とされる。タンデム化は同社のような超大手にとどまらない。ティア1からティア3にまで浸透しており、プレス成形の大きな潮流となっている。
自動車部品の世界生産は、かつてと全く異なる時間軸が存在する。世界中で同時に速やかに生産を立ち上げる要求が高まり、かつてみられた日本の工場で設備を使いこなし、生産技術を熟成させてから海外に持って行くという悠長さはなくなった。したがって、国内工場のエンジニアしか使いこなせない設備は、通用しなくなったのだ。
背景の一つに、高張力鋼板(ハイテン)材の採用拡大がある。ハイテン材は寸法のバラつき、成形の困難さなどから細かな金型調整を必要する。複雑なトランスファー金型は熟練者の技量が必須であり、対応できる海外工場は自然と限られてくる。
協調制御で生産性向上 搬送装置など技術力強化
タンデム化には、プレスの納期を短縮できるという利点もある。納期の相場は加圧能力3000トン機が1―2年とされるが、同300トン機は1年以内といわれる。
また、据え付けに関わる費用を圧縮できるのも魅力だろう。同300トン機では工場に数十トンのトランスファー金型を吊るクレーンは要らず、同3000トン機に比べた全高が低くいため、コンパクトな工場にできる。
何より、生産設備の最重要点の一つである精度については、スライドのたわみを抑えられ、これを向上することができる。加えて、ラインを移設する際、プレス1台単位で新たな工程に再配置することも可能だ。
ライン長が長くなるというデメリットもあるが、これらの多くの利点があるにもかかわらず、中小型でトランスファー化が進まなかったのは、生産性の悪さからだ。かつて同300トン機×6台のタンデムラインの生産性は、13―15SPMほどだったという。同1800トンのトランスファープレスの30SPMに比べるとだいぶ見劣りがする。それが「サーボプレス+搬送装置」の組み合わせにより、25SPMほどに増えた。
高生産性を引き出す中核技術は、サーボプレスと搬送装置の協調制御技術だ。ここにきてプレス各社は、プレス本体のみならず、搬送装置、制御技術の強化を重点戦略としている。
アイダエンジニアリングは2017年11月に東光高岳傘下だった日本リライアンスの株式の80%を取得し、子会社にした。アマダホールディングス(HD)は18年8月に名村造船の子会社だったオリイメックの買収を発表した。アマダHD傘下のアマダマシンツールは、オリイメックの搬送装置と自社の中型サーボプレスで構成するタンデムラインが好調という。買収を機にタンデムラインの事業拡大と、オリイメックの持つ海外拠点を足がかりに、課題としている海外開拓を本格化する。
今後も「制御」「周辺装置」をキーワードにした技術開発と、これらの専業会社との提携、買収が一段と活発になりそうだ。
(2018年11月30日 日刊工業新聞 掲載「日本鍛圧機械工業会創立70周年」特集より)
(2019/7/2 11:00)