つながる社会へ - 5G&IoT

(2019/10/25 05:00)

業界展望台

通信新時代 超高速・超低遅延

ラグビーワールドカップ(W杯)2019日本大会が20日から開幕する。同時に12会場中、8会場で第5世代通信(5G)のプレサービスが始まり、5G対応端末で試合観戦が楽しめる。一方、生産効率向上などを目指して既存の通信技術を生かしたIoT(モノのインターネット)によるサービスや機器の提案が活発化している。ワイヤレス技術の広がりは新市場の創出や新しい価値を提供する。

5Gプレサービス ラグビーW杯で提供

  • ラグビーW杯の8競技場で5Gのプレサービスが開始(東京スタジアム)

ラグビーW杯大会でNTTドコモが5Gのプレサービスを提供する。5Gは(1)超高速伝送(2)超低遅延(3)多数同時接続―が大きな特徴だ。現行の4Gと比べて、データ通信速度は約100倍となる1秒当たり10ギガビット(ギガは10億)、伝送時の遅れは10分の1となる1ミリ秒(1000分の1秒)を実現する。多数同時接続は1平方キロメートル当たり100万台だ。2時間映画のダウンロードにかかる時間は5分必要であったが3秒で済み、4K映像も受信ができる。超低遅延のためリアルタイムに建機やロボットなどの遠隔操作が可能で、屋内外の家電やセンサー、自動車などあらゆる機器が接続できる。

5Gは米国と韓国が19年4月に商用サービスを開始し、日本は20年春に商用サービスを目指している。

今回のW杯では5G対応端末を観客に貸し出し、マルチアングル(多視点、イメージ)映像や解説情報をリアルタイムで楽しめる。東京スタジアムと横浜国際総合競技場で撮影した報道写真をカメラに接続した5G端末経由で高速送信するサービスも行う。9月20日の日本対ロシアと10月13日の日本対スコットランドの試合映像を5G網経由で東京都中央区のベルサール汐留に設置した会場に伝送し、大画面に映し出すライブビューイングも実施する。

  • 基地局の熱対策や小型化が求められるタンタルコンデンサー(トーキン提供)

こうした5Gには新たな無線技術が求められる。超高速通信に必要な数百メガヘルツ以上の広周波数帯域への対応や、ミリ波などの高い周波数帯への対応、超低遅延を実現する無線フレーム構成などの無線技術が必要だ。高い周波数(SHF帯、EHF帯)におけるアンテナ素子の小型化や、多素子アンテナの位相や振幅制御により指向性を持たせたビーム(ビームフォーミング)を作り出す超多素子アンテナ(マッシブMIMOアンテナ)が重要となる。

周波数帯や通信速度が各段に上がることで、従来なかったノイズ環境が想定される。トーキンは5G投資の活発化を見据えて周波数3ギガ―30ギガヘルツの高周波帯域に対応するバスタレイドを開発した。基地局やデータ通信の際に信号を送受信する光トランシーバーに欠かせない部材だ。

基地局も小型で屋外設置が見込まれており、過酷な温度環境に耐え小型の電子部品の要求も高まっている。

IoT対応通信技術 LoRaに注目

移動体通信技術は約10年周期で進化している。日本でLTEサービスの商用化はNTTドコモが10年12月にスタートさせた。

IoT時代に合わせて、新たな通信技術として消費電力が少なく広域に無線通信する「LPWA」に注目が集まっている。

LPWAはLTEの周波数帯域を利用するLTE―MやNB―IoTがあり、通信キャリアの携帯電話基地局を使う。ノンキャリアとしては「LoRa」があり無線免許不要の920メガヘルツ帯を使用する。

  • アムニモの親機にデータを送信する端末

横河電機の子会社であるアムニモは産業向けIoTサービスの提供を始めた。サービスは端末の貸し出し台数と携帯電話通信容量、利用者数に応じて課金される。専門的な知識が不要で、簡単な接続作業でIoT活用ができる。各種機械からセンサーで収集したデータは独自端末でアナログ入力し、LoRaで親機に送信する。コールセンターを構築しており、運用監視や障害時の対応などに応える。生産性向上に向けてIoT導入を検討したいが何ができるかなど企業の相談にも応じ、具体的な導入を支援する。

同サービスを活用した新たな製品・サービス開発、販売などを行いたいパートナー企業を募集しており、IoT市場を共創する方針だ。

(2019/10/25 05:00)

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