(2020/4/1 05:00)
冷凍加工技術はマグロの冷凍保存ニーズへの対応から発展し、1964年の東京五輪大会における選手村での食事提供を契機に冷凍食品が普及した。冷蔵・冷凍を必要とする食品・食材は、核家族化や調理の時間短縮、食生活の変化などで需要が多様化している。冷凍加工と倉庫物流は一体となって高い鮮度の食品・食材を食卓へ届けている。
冷凍加工 ドリップ対策 急速凍結が主流
肉や魚は0度~マイナス5度Cの最大氷結晶生成温度体で内部の水分が凝固し、結晶化する。最大氷結晶生成温度帯で時間をかけて緩やかに凍結すると、氷結晶が大きくなり細胞を傷つけ、解凍時にうまみ成分であるドリップを漏出する。現在、解凍時のドリップ対策として急速凍結が主流になっている。
「エアブラスト凍結」ではアンモニア(NH3)や窒素(N)などで冷却した空気をフリーザー内のファンで循環させ、食品を凍結させる。冷風による食品表面の乾燥を防ぐため、空気の循環をコントロールし、均一に食品・食材を急速凍結する。
また、空気と比べ熱伝導が早く、凍結点が低いアルコールを冷媒とした「液体凍結」が注目されている。液体凍結では真空、脱気パックに包装した食品・食材を約マイナス30度Cに冷却したアルコールと水の液体に浸漬(しんし)する。食材・食品の表面は液中で均一に凍結できる。
液体凍結では最大氷結晶生成温度帯を急速凍結するため、氷結晶が食品内部の細胞を破壊しない。ドリップの漏出がなく、味、色、食感など食品・食材の品質低下を生じない。
横浜市のテクニカンは液体急速凍結機「凍眠(とうみん)」を製造・販売している。同社の山田義夫社長は「液体凍結は食品の鮮度を保った状態で長期保存でき、食品小売り業などのビジネスに変革を起こす可能性がある。食品廃棄物の削減にも貢献する」と意気込む。
コールドチェーン 物流インフラ担う
コールドチェーンは生産地から小売りまでを規定の冷蔵・冷凍温度に保ったまま流通させる手法。冷蔵・冷凍倉庫は農産物、畜産物、水産物などの冷蔵・冷凍を必要とする食品・食材などの入庫から保管、出庫までの物流インフラを担っている。
冷蔵・冷凍倉庫はマイナス20度Cを境にクーラー(C)級、フローズン(F)級に分けられる。C級は1~3級、F級は1~4級に細分化した温度管理を徹底している。冷凍焼けや霜の付着がしない温度管理が求められている。
近年、食生活の変化や外食産業の需要増加、環太平洋連携協定(TPP)や日欧経済連携協定(EPA)により冷蔵・冷凍を必要とする肉や魚、冷凍野菜などの入庫量が増えている。
中でも冷凍食品の入庫量は年々増加しているが、冷凍食品は比重が小さく、ほかの保管物と同じ重量でも保管容積を必要とするため、庫内スペースを切迫する一因にもなっている。庫内スペースの確保は倉庫事業者の課題の一つに挙げられる。
現在、「モントリオール議定書」によるフロンガスの生産終了に伴い、倉庫事業者はフロンを使用しない水、二酸化炭素(CO2)、NH3などの自然冷媒を使用した冷凍機ユニットや空調機器、冷却システムの導入を進めている。
業務効率化 品質管理に貢献
冷却空調方式として「ユニットクーラー方式」や「自然対流方式」などがあるが、自然対流方式では庫内を二重天井構造にし、天井スペースを冷却する。空気の自然対流を起こし、倉庫全体を冷やすため、食品の一部分にだけ冷風が当たることによる冷却ムラや冷凍焼けを防ぐ。温度や湿度の変化が少ないため高い品質管理ができると期待されている。
(2020/4/1 05:00)