最大動作電圧1000ボルトを実現 菊水電子工業 直流電子負荷装置5機種【PR】

(2020/4/6 23:30)

並列同期運転で最大電力100キロワット

 ハイブリッド車(HV)に続いて電気自動車(EV)も普及し、高電圧・大容量の車載電装品が増えている。また、クラウドコンピューティングの本格化に伴い、高電圧給電のサーバー市場が拡大している。こうしたパワーエレクトロニクス機器の性能評価や試験ニーズに対応し、菊水電子工業は直流電子負荷装置のフラッグシップモデル「PLZ―5WH2シリーズ」5機種を製品化した。最大動作電圧1000ボルト、最上位機種で最大電力20キロワットを実現。さらにシリーズ内で同一機種に限らず5台まで組み合わせて、最適な容量にする並列同期運転も可能にした。開発者2人に背景や狙いを聞いた。

フラッグシップモデル投入

製品開発一部開発二課主任 榊原 将洋 氏

-PLZ―5WH2シリーズの開発に着手したのはいつ頃ですか。

榊原

発売(1月末)の1年半余り前、2018年6月だ。市場の高電圧化ニーズに対応し、大容量タイプ(12キロワット、20キロワット)の最大動作電圧を650ボルトから800ボルトに引き上げたPLZ―5WHを先行発売していたが、従来のPLZ―4WHシリーズを9年ぶりに全面リニューアルし、1キロワットから5機種すべてを1000ボルトに対応した。高電圧・大容量の直流電子負荷への市場ニーズが高まり、1年半という短期間で製品化にこぎつけた。

 設計を一から見直して最良の電子部品を選定したことで、装置サイズもコンパクト化した。例えば従来のPLZ―4WHシリーズでは、1キロワットモデル「1004WH」に専用ブースター(補助装置)を付けて容量3キロワットにすると7U(1Uは高さ44.5ミリメートル)になってしまうが、PLZ―5WH2シリーズの4キロワットモデル「4005WH2」は単体で3U。3.1倍の電力密度で省スペースを実現する。さらにシリーズ内モデルの並列同期運転を可能にしたので、ブースターそのものが不要になった。

 もちろん「キクスイ」ブランドを裏切らない信頼性でも、海外メーカーを含めて他社製品より優位だと自負している。ドロッパ方式の電子負荷装置として、できることはやり尽くした。

-高性能化しているのに、容量当たりの製品価格は下がっています。

榊原

全面的な設計の見直しに加え、原価低減活動の成果もある。異モデルの並列接続が可能になって使い勝手も従来と比べものにならないほど良くなっており、結果的にコストパフォーマンスは目覚ましく向上している。

-9年前のPLZ―4WHシリーズ発売時に比べ、直流電子負荷装置の用途となる製品分野はどう変わっていますか。

榊原

何と言ってもHV、EVと自動車の電動化が進んだことが大きい。最大動作電圧が650ボルトのPLZ―4WHシリーズでは、車載電装品の高電圧・大容量化に対応し切れなくなる事態が見えていた。それに先んじて最大動作電圧1000ボルトのPLZ―5WH2シリーズを製品化でき、当面のニーズには応えられる。

 EVだけでなく、HVに外部充電機能を付加して電気だけで走れる距離を延ばせるプラグインハイブリッド車(PHV)も登場し、搭載する充電用AC/DC(交流/直流)コンバーター、オンボードチャージャーの高電力密度化も求められてくるだろう。ただ、充電時間を短縮するために電圧を高めるほど、感電事故の危険性が増す。人が介在しない新たな給電方式の実用化が待たれる。

 PLZ―4WHシリーズ発売時は、自動車の電動化に今ほどの勢いはなかった。それよりも、普及し始めた再生可能エネルギーを使うのに不可欠なパワーコンディショナーや家庭用燃料電池など、新エネルギー関係の需要が多かった。そこにEVやサーバーが加わった。足元では市場が海外へ大きく広がる自動車産業で、EV化の波が一気に来ている状況だ。PLZ―5WH2シリーズは国内よりも、輸出が増えると見込んでいる。

パワーデバイス温度上昇対策 ファン冷却を最適化

製品開発一部開発二課 森 智瑛 氏

-高電圧・大容量仕様のPLZ―5WH2シリーズでは、制御システムも改良したそうですね。

PLZ―4WHシリーズには中央演算処理装置(CPU)を使っていたが、PLZ―5W/PLZ―5WH/PLZ―5WH2シリーズでは、パワーモジュール制御で普及してきたFPGA(プログラミング可能なLSI)を搭載した。最新のPLZ―5WH2シリーズはPLZ―5W/PLZ―5WHシリーズに比べ、さらに機能を追加している。

 苦労したのは、パワーデバイスの温度上昇対策。PLZ―5WH2シリーズでは容量4キロワットの「4005WH2」まで、1キロワットモデルの「1005WH2」と同じ3Uの筐体に収めることが製品開発のコンセプトだった。新シリーズで主力機種となる4005WH2は1キロワットのユニットを四つ、横に並べた構造。内部の熱を効率的に外へ逃がす必要があった。構造を大きく変えずに、温度を下げるための試行錯誤を繰り返した。

 PLZ―5WH2シリーズでは、PLZ―4WHシリーズからレイアウトの抜本的な見直しともに冷却用ファンを変え、これまでの背面ではなく前面に配置して空気の流路を最適化。ヒートシンクの冷却能力をフルに引き出し、体積当たりの電力密度を高めることに成功した。従来、冷却用ファンを背面に置いていたのは、ファンのメンテナンス性を優先したため。昨今のファンは堅牢性に優れており、背面に置く必要はなくなった。苦労した分だけ、PLZ―5WH2シリーズが完成したときの感慨はひとしおだった。

-開発者も定期的にユーザーへ足を運んでいるとか。

榊原

たびたび、営業担当者と一緒に出向いている。すべてを見せてくれるわけではないが、生の声を聞いて製品開発の方向性を確認する貴重な機会になっている。

フルモデルチェンジ―最適な容量選択可能

PLZ-5WH2シリーズ全5機種

車載電装品評価試験など高電圧・大容量ニーズに対応

 PLZ―5WH2シリーズは最大動作電圧1000ボルト、最上位機種で最大電力20キロワットの直流電子負荷装置。2011年発売のPLZ―4WHシリーズを9年ぶりにフルモデルチェンジした。国内外の自動車メーカーが競い合うようにHV、EV、PHV開発を進め、車載電装品の評価試験などで高電圧・大容量ニーズが強まっていることに対応する。動作電圧は10-1000ボルト(最小動作電圧1.5ボルト)。最大電力1キロワットから20キロワット、最大動作電流20アンペアから400アンペアの範囲で5機種あり、価格は55万-500万円(消費税抜き)。年間500台の販売を見込む。

4キロワットモデルの「4005WH2」

 従来のPLZ―4WHシリーズは最大動作電圧650ボルトで、高電圧・大容量ニーズへの対応を図ったPLZ―5WHの「12005WH」(最大電力12キロワット)と「20005WH」(同20キロワット)は800ボルトだった。また、複数台をつなぐ並列同期運転は最大5台で同じだが、同一機種に限らずシリーズ5機種の組み合わせで、最適な容量を選択できるようにした。

 動作モードは定電流(CC)、定抵抗(CR)、定電圧(CV)、定電力(CP)のほか、任意の電圧・電流値を複数(3-100点)指定できる任意IV特性モードがある。定格電流までの立ち上がり時間は、最上位機種の「20005WH2」で20マイクロ秒(マイクロは100万分の1)を実現し、電源評価で重要視される高速過渡応答試験に対応する。

 デジタルインターフェースにはLAN、USB、RS232Cを標準装備した。

詳細・お問い合わせ

菊水電子工業株式会社

菊水電子工業株式会社

〒224-0032 横浜市都筑区茅ケ崎中央6番1号 サウスウッド4階

TEL:045-482-6912(大代表)

高電圧大容量 直流電子負荷装置【PLZ-5WH2シリーズ】

https://www.kikusui.co.jp/catalog/?model=plz5wh2

(2020/4/6 23:30)

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