(2020/6/4 05:00)
学びの機会をどう確保し、より良いものとするか。幅広な視点で議論を継続すべきだ。
学校の9月入学を巡る政府・与党の議論がまとまり、2020年や21年の実施は見送りとなった。拙速な移行は混乱をもたらすだけであり、妥当な内容と受け止めたい。
早急に取り組むべきは、新型コロナウイルス感染症による長期の学校休校で奪われた学びの機会をいかに取り戻していくかだ。夏休みの短縮など授業時間の確保が検討されているが、地域や学校間で学力格差が生じている。全国的な調査で実態を明らかにする必要がある。
中高の3年生にとっては、受験がいつどのようなかたちで行われるのかが気がかりだろう。特に大学入試は大学入学共通テスト導入の初年度である。入試時期や出題範囲の調整など、方針を早めに示すべきだ。
9月入学問題が浮上した背景には、学力格差の是正とともに、欧米の多くがとる秋入学に合わせることで、留学生を呼び込みやすいという考えがあった。経団連など産業界からも歓迎する声が上がっていた。
安倍晋三首相は4月に「前広にさまざまな選択肢を検討する」と言及し、政府内で21年9月実施の可能性を示して検討を重ねてきた。
これに対し日本教育学会が、9月入学切り替えにかかる国や自治体、家庭の負担などの費用が6兆―7兆円と試算。それよりもパソコンなどオンライン教育に必要な情報通信技術(ICT)環境の充実などに投資すべきだと提言。自民党の作業部会も「20、21年度の直近での導入は困難」との提言を安倍首相に提出したことで、早急な実施の見送りが固まった。
9月入学問題は古くて新しい議論であり、メリット・デメリットの論点はほぼ出尽くしている。この間の検討で明らかになったのは、移行にはコストと時間が必要ということだ。こうした課題を乗り越えられれば、9月入学への道も開かれるだろう。学びの機会の充実や国際化など、より良い方向を目指し、検討を継続してもらいたい。
(2020/6/4 05:00)
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