(2020/9/29 05:00)
近年、地球温暖化の影響で自然災害が多発化、甚大化し各地で大きな被害が出ている。菅義偉首相は「自助・共助・公助」を掲げ、防災においても自助の重要性を強調する。だが自助には限界がある。共助として、企業が地域防災に本格的に関わる仕組みを考えてはどうか。
9月上旬に襲来した台風10号は過去最強といわれたが、被害は抑えられた。海水温が低く想定より発達しなかったことや、数日前から繰り返し注意喚起し、多くの人が事前に避難したことが要因だ。一方で、避難所は新型コロナ感染症の拡大防止のために人数制限され、500カ所以上で入れない人が出た。
広い敷地や堅牢な建物を持つ企業を、地域の避難所として機能させられないか。そうした企業間や官民の連携をサプライチェーンやライフラインの確保にまで広げることで、持続可能な仕組みができる。
名古屋大学の福和伸夫減災連携研究センター長が音頭を取る西三河防災減災連携研究会は、9市1町とトヨタグループや中部電力、東邦ガスが協力する組織。災害時のライフライン確保や輸送対応などに重要な役割を果たしている。もともとは各社が非常時の事業継続のために、本音で弱点を出し合い、対策を考える会が出発点だ。そこから国や地方自治体と企業・個人との役割分担、公表可能な共通課題の社会への提言など活動は広がり、地域防災の要となった。
だが、こうした例はまれだ。新型コロナウイルス感染症による景気悪化に苦しむ企業は、積極的に防災連携する余裕はない。多くの中小製造業は災害時の設備対策すら十分ではなく、水害時にオイル流出させるなど被害を拡大させた事例もある。
国が7兆円を投じて重要インフラの緊急点検を行った「防災・減災、国土強靱(きょうじん)化のための3か年緊急対策」は、課題の95%を達成し2021年3月に終了する。次年度以降の対策で、公の予算で企業を防災拠点に活用する方法を考えるべきだ。そうした仕組みが各社の緊急時の事業継続に役立てば、地域の安全安心や早期復旧にも結びつく。
(2020/9/29 05:00)
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