社説/コロナ禍の熱中症対策 リスク拡大、例年以上に備えを

(2020/6/5 05:00)

6月に入り、気温や湿度の上昇が続いている。熱中症への備えが必要な時期だが、今年は新型コロナウイルス感染症対応に忙殺されて、後回しになっている企業も多い。死者数の急増を招きかねない危険性を認識し、対策を講じてもらいたい。

厚生労働省によると、2019年の職場での熱中症の死傷者は829人、そのうち死亡者は25人にのぼる。猛暑だった18年の28人よりは下回ったが、毎年多くの死者が出ていることを重く受け止めなければならない。

特に今年は、新型コロナ対策で在宅時間が長くなり、暑さを感じにくくなっている人が多い。中央労働災害防止協会は「体力が落ちている状態での作業は熱中症リスクが高まる。暑熱順化(暑さにからだを慣れさせること)を意識してほしい」と呼びかけている。

感染症には有効なマスクも、熱中症には危険な面もある。マスクをしていると、口周辺の湿度が高いので、喉の渇きを感じにくく、脱水症状になりやすい。厚労省は「屋外で人との距離が2メートル程度確保できる場合には、マスクを外す」とし熱中症リスクがある場合は、マスクをしないことを前提に対応することを求めている。小売店や宅配事業など、マスクを外せない仕事は、交代時間を短くするなどの配慮が必要だ。

水分・塩分が定期的に補給できる休憩場所の設置や暑さ指数(WBGT)の計測など、基本的な熱中症対策を今のうちに準備する。作業中の従業員の心拍数や体温などを把握できるウエアラブルデバイスや移動型のスポットクーラー、ミスト式冷却器など、さまざまな熱中症対策機器が登場している。自社の状況に応じた活用も考えてもらいたい。

熱中症の過去の死亡事例を見ると、初期対応が十分でないために重篤化し、死に至るというケースが多い。疲れを感じたら即座に休息する、躊躇(ちゅうちょ)せず病院に行くなど、職場全体で熱中症リスクを想定した行動をとる心構えを伝えることが重要だ。暑さが本格化するこの時期に、認識を共有しておきたい。

(2020/6/5 05:00)

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