住宅産業/ホームジム設置と筋トレ方法

(2020/7/31 05:00)

業界展望台

日本パワーリフティング協会 奥谷元哉

昨今、一過性のブームで終わらず新しい国民的習慣として定着しつつあるのが筋力トレーニング(筋トレ)。筋トレを自宅で効率的に実施するために有効なホームジムの作り方について、パワーリフティング競技者でありトレーニング器具メーカーを経営する筆者が、これまでの経験に基づいて解説する。併せて、家庭でも取り組みやすい代表的なトレーニング種目を紹介する。

筋トレと器具

今から5年ほど前までは、「筋トレ」といえば競技能力向上のためにアスリートが実施するものだった。もしくは、ベンチプレス、デッドリフト、スクワットなどの筋トレ種目自体が競技である「パワーリフティング」、筋トレにより得られる筋肥大効果を競う「ボディビルディング」などが一部の競技種目選手や愛好家によって行われている、とてもマイナーな運動だった。

しかしながら、この数年でマスコミなどにより、筋トレの一要素である「身体の形作り」の効果が広く取り上げられるようになった。その結果、本来の目的を離れてボディーメークやダイエットの手段として、広く普及するに至った。

もちろん、このこと自体は国民の健康増進に働く部分も多く、歓迎される側面だ。しかし急激に普及が進み商業化されたことによる弊害も、ゼロではない。

具体的には、古くから筋トレを実施している競技界からのフィードバックを伴わない、安易に製造された器具類の乱造、そしてそれらを販売するために経験値のないライターによって大量生産された商業記事だ。

これらの器具や情報には安全性に疑問符の付くものも少なくない。よって、消費者は信用できる情報を選別し、そこから信頼性の高い器具類を購入する必要がある。安易なトレーニング器具の選択はけがなどのリスクがつきまとうことを忘れてはならない。日本パワーリフティング協会など、信頼できる協会団体のトレーニング情報や、競技者の経験値がフィードバックされたトレーニング器具メーカーの製品をおすすめする。

ホームジムの作り方

  • 自宅に設置されたジム

ホームジムは総重量で1トンを超えるほどの重量物が数畳程度の面積に乗るので、その設置場所として理想的なのはガレージやマンションなどコンクリート面上だ。

しかし、住居的な制約のため、木造住宅の居室にホームジムを設置するトレーナーも少なくない。この場合、地震などのリスクを考慮すると、2階よりも1階に設置することを勧める。また、設置場所にかかわらず、器具類の重量を分散するために床にコンパネを敷き、さらに騒音防止用ゴムマットを敷くのが一般的だ。

  • パワーラック

トレーニング器具にはさまざまなものがあるが、ホームジムの場合は限られた居住空間を有効活用する必要がある。ベンチプレス、デッドリフト、スクワットのいわゆる「筋トレビッグ3」が一つでこなせるパワーラック、またはコンボラックを中心に組み立てるとよい。

中心となるパワーラックやコンボラックにバーベルセットとダンベルをそろえ、さらに空間と予算に余力があればケーブルマシンやカール台を加えていくのが定番だ。

  • コンボラック

なお、トレーニング器具だけに気をとられるのではなく、トレーニングベルト、リストラップ、エルボースリーブ、ニースリーブといった装備品も、安全管理と効率的なトレーニングのためには必需品と言えよう。

家庭でできる筋トレ

  • 筋トレで鍛えられる筋肉の名称と場所

1.上半身を押す作用の筋肉

胸の筋肉である「大胸筋」、肩の筋肉である「三角筋」、二の腕後ろ側の筋肉である「上腕三頭筋」などが含まれる。

この筋肉グループを鍛えるトレーニング種目は、自重トレーニングであれば腕立て伏せ、ダンベルトレーニングであればダンベルプレス、バーベルトレーニングであればベンチプレスなどが代表的だ。

2.上半身の引く作用の筋肉

背中の筋肉である「広背筋」「僧帽筋」、二の腕前側の筋肉である「上腕二頭筋」などがある。

この筋肉グループを鍛えるトレーニング種目は、自重トレーニングであれば懸垂、ダンベルトレーニングであればダンベルローイング、バーベルトレーニングであればデッドリフトなどがある。

3.体幹の筋肉

体幹前側に位置する「腹筋群」、体幹後ろ側に位置する「脊柱起立筋群」などが含まれる。

この筋肉グループは、上半身や下半身を鍛えていくなかで自然と鍛えられる。あえて単独で鍛える必要性は低いだろう。

4.下半身の筋肉

太もも前側の筋肉である「大腿四頭筋」、下半身後ろ側の筋肉である「臀筋群」や「ハムストリングス」などがある。

この筋肉グループを鍛えるトレーニング種目としては、スクワット系の種目が基本だ。

これらのトレーニングを実施していくに当たって、もっとも効率的とされているのが「部位分割法」と呼ばれるメニューの組み方で、スプリットメニューとも呼ばれる。すなわち、1日にすべての筋肉をトレーニングするのではなく、全身の筋肉を3グループに分け、1週間をかけてローテーションで鍛えていくという方法だ。

〈具体例〉

週1回目:上半身の押す筋肉のトレーニング

週2回目:下半身の筋肉のトレーニング

週3回目:上半身の引く筋肉のトレーニング

詳しくは日本パワーリフティング協会のホームページで詳しく解説しているので参考にしてほしい。(https://www.jpa-powerlifting.or.jp/workoutmenu

【プロフィル】おくたに・もとや

日本パワーリフティング協会で広報を担うかたわら、トレーニング器具メーカー「ONI」の代表を務める。筋力トレーニング歴は24年、国内外の数多くのパワーリフティング競技に出場し、好成績を残すなどの実績を持つ。

住宅産業

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(2020/7/31 05:00)

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