(2020/8/28 19:00)
安倍晋三首相が28日、退陣の意向を表明した。持病の潰瘍性大腸炎が悪化し、執務を続けるのが困難になったとの理由。自民党総裁としての任期を、1年余り残しての決断となる。新型コロナウイルスの新規感染者数が高止まりし、景気も急速に落ち込んだ中で政治に空白が生じれば、日本経済が深刻な打撃を受けかねない。次期政権は新型コロナの感染を着実に抑え込み、景気回復への足取りを確かなものにする必要がある。
安倍首相は同日の会見で、退陣の決断に至った背景を「国民の負託に自信をもって応えられる状態でなくなった」と明かした。その上で「(新型コロナの)感染拡大が減少傾向に転じ、(インフルエンザの流行期を見据えた新しい)対策もまとまった。新体制へ移行するのなら、このタイミングしかないと判断した」と述べた。
後任には自民党の岸田文雄政調会長や石破茂元幹事長、菅義偉官房長官らの名が取り沙汰されている。次期政権にとっても安倍内閣と同じく、新型コロナの感染拡大を抑えながら、経済・社会活動の水準を着実に引き上げていくことが当面の最重要課題になる。
足元の景気はコロナ禍の影響による落ち込みから徐々に持ち直しつつあるものの、その足取りは重く、感染状況の先行きも依然として不透明感が強い。後任の首相には安倍内閣がこの間、重点課題として掲げてきた雇用と事業、生活を守る取り組みの実効性を高めるため、政権基盤を早期に固めて、強力な指導力を発揮することが求められる。
(2020/8/28 19:00)