(2020/12/1 05:00)
総務省消防庁は1987年に自治体消防発足40年を迎えたことを機に、11月9日を「119番の日」に制定した。防災意識を高めるとともに、適切で迅速な119番通報を呼びかける啓発活動を行う。これから火災が広がりやすい空気が乾燥する季節に入るため、住宅や事業場では防火への備えを心がけたい。
防火・防災に備えを
火災は最悪の場合、人命を奪うのみならず、建物の損傷、延焼による周辺環境への影響を与えかねない。2016年の新潟県糸魚川市での火災は強風で大規模火災に発展。19年には沖縄県の首里城が火災で全焼する火災事例も発生した。
総務省消防庁がまとめた「令和元年における火災の状況(確定値)」によると、19年の総出火件数は3万7683件。建物別では住宅火災が1万784件を占めている。
住宅以外では特定複合施設が2056件、工場・作業場で1803件だった。火災発生件数は少ないが倉庫で553件(18年比23.7%増)、グループホームなどで68件(同51.1%増)を記録した。
工場や倉庫などでは漏電などによる電気配線からの出火や、電気溶接機、グラインダーなどの作業に関連した電気機械器具からの出火が多い。可燃物が多く存在し、延焼拡大を起こしやすいため、消火器を使った迅速な初期消火活動が重要だ。
消防法は建造物の延べ床面積、階層によって消火器、消防スプリンクラー、火災報知設備などの設置義務を細分化している。消防法令などにより設置が義務付けられる業務用消火器の耐用年数はおおむね10年とされる。
11年1月には消火器の規格省令が改正された。22年以降、旧規格消火器(文字表示による適応火災マーク)は消火器として認定されなくなる。日本消火器工業会は絵表示による新規格消火器への交換を呼びかけている。
秋の全国火災予防運動 訓練や消火設備確認実施
総務省消防庁は「秋の全国火災予防運動」を9日から15日まで実施する。今回のスローガンは「その火事を 防ぐあなたに 金メダル」に決定した。実施要綱は(1)住宅火災防止対策(2)製品火災の防止対策(3)放火火災防止対策の推進―など。
同庁は設置から10年以上が経過した電池切れや電子部品の劣化が進んだ住宅用警報器の適切な点検・交換を呼びかける。また、地震・台風などの影響で停電時から電気が復旧した際の通電火災への備えも呼びかける。
放火火災は死角となる場所や深夜時間帯に多く発生している。出火の発見遅れによる被害拡大を防止するためには炎感知器、侵入監視センサー、警報器、センサー付き照明などの防火・防犯設備の設置が効果的とされる。
救急通報は落ち着いて
火災や救急事案などに直面した時には、落ち着いて「119」への電話を心がけたい。救急通報のポイントを次に挙げる。
(1)火事か救急かを正確に伝える(2)通報場所の住所(正確でない場合は周辺の施設などの情報)を伝える(3)火事の場合は何がどう燃えているか、救急の場合は救急車が必要な人の性別、年齢、状態(4)通報者の氏名と電話番号を伝える。
神戸市は今年からスマートフォンの映像伝送を活用した救急通報サービス「Live 119」の本格運用を開始した。通報者と救急センターとの音声通話だけでは把握が難しい視覚的な情報を、ショートメッセージサービス(SMS)を経由したビデオ電話で即時に収集可能。救急隊が到着するまでの間、救護者へ適切な応急処置の指導もできる。
同市ではこれまでに19件の救急通報で「Live 119」を使用。映像伝送による早急な消防隊の増強や、位置情報が不明確な際の通報場所の特定などに奏功している。同サービスは東京都なども導入を検討している。
(2020/12/1 05:00)