産業春秋／携帯電話の値下げ

「あなたはやればできる子よ」―。子どもをヤル気にさせるのに親が使う決まり文句だ。ただ「やればできる」には、難しいことでもチャレンジすればできるという前向きな意味と、やれるのに今まで放置していたというネガティブな意味もある。

大手携帯電話３社の料金プランが出そろった。最後発で注目されたＫＤＤＩは、月額２４８０円と先行したＮＴＴドコモ、ソフトバンクより５００円低い金額（５分以内の通話かけ放題は別途５００円が必要）とした。

先行２社が再値下げで追随するか、別の作戦で対抗するか興味は尽きないが、３月から日本の携帯電話料金が大幅に下がるのは間違いない。

残念なのは今回の値下げが企業間の自発的な競争ではなく、菅義偉首相の強い要望による“菅製”値下げであったことだ。だからどうしても消費者から「やれるのに今まで放置していた」と受けとられてしまう。

大幅値下げだけでは各社の業績は低迷し、今後の第５世代通信（５Ｇ）投資にも遅れが生じるかもしれない。値下げで財布のひもがゆるんだ消費者が、喜んでお金を投じるサービスの提供で競い合い、前向きに「やればできたね」と評価されるようになってほしい。