(2021/8/25 05:00)
外国人技能実習制度のあり方を見直し、必要な保護のあり方を考えなければならない。
日本の外国人技能実習制度について、米国務省が人権侵害との疑いを示した。会計検査院も実習生の受け入れ機関である「外国人技能実習機構」が、実習生の失踪事案の調査が不十分であることを指摘した。国内外で制度のあり方への疑問が浮上する事態であり看過できない。
そもそも外国人技能実習生を単純に「低賃金労働者」ととらえることは間違いだ。本来は途上国への技術移転を兼ねた実習制度として、通常の労働者の賃金水準と一線を画した報酬としてスタートした。
しかし一部業界の人手不足を背景として、より労働力としての側面が強くなった。現在では勤労資格のある外国人労働者のうち、約4分の1が技能実習生とされる。今や農業、介護、建設、金属加工、食品加工、繊維製造など多くの業界で欠かせない存在になっている。
問題はコロナ禍で業績が低迷した企業で、技能実習生が雇用の調整弁にされてしまうことである。実習生としての保護を受けられず、仕事や住居を失って犯罪に走るケースが報じられている。実習生の母国からも、彼らを受け入れた日本企業への不満が聞かれるという。
実習生を使い捨てにするような悪質な企業は、ごく一部だろう。しかしそれが間違って解釈され、人権問題とみなされるようではいけない。本来の目的である技能の習得を着実に実行する企業だけが利用できるよう制度を厳格に運用し、同時に必要なら賃金のあり方や失業時の保護措置も見直すべきだ。
コロナ禍が収まれば、人手不足の再来は必至だ。自動化やロボット導入を進めても、外国人労働者の必要性は今後も高まるだろう。人手不足対策として2019年に新たな在留資格「特定技能」も導入された。労働力確保が目的なら、技能実習生から特定技能へ移行させ、処遇改善を実現させていくべきだ。海外からの批判を契機に、きちんと日本の産業界に受け入れていくよう制度を見直したい。
(2021/8/25 05:00)
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