(2021/12/16 05:00)
コスト高対策だけでなく、食料安全保障の面からも技術力を活用したい。
食品メーカーや外食企業で値上げの動きが広がっている。吉野家ホールディングスは牛丼並盛りの店内価格を387円から426円に引き上げた。キユーピーや味の素も主力商品の値上げを決めた。
食品というとコメや野菜など基礎食料品のイメージが強いが、現代人の生活で大きな割合を占めるのが、外食を含めた加工食品だ。原材料費に加え、調理や包装などの加工費や店舗へ運ぶ物流費がかかる。コロナ禍で、これらのコストが大きく上がった。
食品メーカーは梱包の簡略化や、製品の量目をわずかに減らすなどして価格を維持しようと努力してきた。しかし最近の原料費の急騰で、こうしたやり方も限界に来たようだ。
特に負担の重い人件費の上昇を吸収するには、ロボットなどの自動化や省力化が有効だ。加工業務で人手を募集する食品メーカーや農業法人の悩みは、曜日や時期、気温や天候などに応じて必要人数が大きく変動すること。ロボットならば事前の設定で変量生産に容易に対応できる。アルバイトを雇ったもののムダに待機させたり、研修に時間を割いたりせずに済む。
一方、外食産業では、新型コロナウイルスの感染防止のため対面接客から、持ち帰り・作り置き重視の業態に転換が進んでいる。また調理した食品を長期保存できる包装フィルムも登場している。こうした動きは、ロボットや自動化機械にとって追い風といえる。加工や物流分野で省力化できれば価格変動への耐性も高まり、割高とされる国産の食料を使うケースも増えてくるのではないか。
これまでコスト削減には、価格優位性のある海外に生産や加工を移管し、輸入する方法が主流だった。しかし近年の世界経済分断で、食料貿易そのものが“外交戦略の道具”に使われる恐れが台頭している。食品産業の自動化・ロボット化には食料安全保障の意味があることも忘れずにいたい。
(2021/12/16 05:00)
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