(2021/12/24 05:00)
安定化電源や電子負荷はエレクトロニクスの進化を支える重要な電子測定器の一つ。研究開発や生産、産業機器の組み込み用途など幅広い需要に応えている。脱炭素社会に向けて企業や社会が大きくかじを切る中、電気自動車(EV)など次世代自動車の開発や普及を背景に、安定化電源や電子負荷は存在感を高めている。
脱炭素社会へ進化支える
安定化電源や電子負荷装置は直流(DC)と交流(AC)のモデルがある。家電製品はコンセントから交流の電力(商用電源)を受け、機器内部で直流に変換。直流安定化電源は商用電源を、直流の電気に変換してエネルギーを発生させる。
商用電源は発電所からコンセントに電力が届くまでに電圧変動の影響を受ける。交流安定化電源は周波数や電圧など安定させた交流電力を発生させることができる。
電子負荷は電流や電圧を自由に変え、多様な負荷を与えることができる。
安定化電源と電子負荷を1台に集約した「双方向安定化電源」や、交流と直流のエネルギーを1台で対応できる大容量の安定化電源が登場し注目を集めている。
大容量化する安定化電源や電子負荷において、「回生」機能の搭載が進んでいる。この機能は電子負荷などが受け取ったエネルギーを商用の電力に変換し、工場など構内の照明や冷暖房用のエネルギーとして利用できる。省エネルギー化や二酸化炭素(CO2)排出抑制に貢献する。一方この回生機能未搭載の電子負荷では、エネルギーを熱変換して放出するためエネルギーロスが大きい。
菊水電子工業は9月22日に、オープン団体である「Charging Interface Initiative e.V.(CharIN)」のメンバーに加入したことを発表した。同団体はさまざまなEV向け充電技術の業界標準として、コンバインド充電システム(CCS)の促進のために設立された。
テクシオ・テクノロジーは同社初となる双方向安定化直流電源を20日に投入する。回生機能を搭載。商用電源からEVやプラグインハイブリッド車(PHV)に充電する車載充電器(オンボード・チャージャー=OBC)、充電器などの試験向けに提案する。新製品は“New responsibility.”「新しい責任」をキャッチコピーに開発した。
クロマジャパンはEVやPHVの開発が加速するとともに、多彩な産業から市場参入が増加していることを受けて、EV関連市場に注力。回生機能搭載の双方向安定化直流電源はOBCや車載用DC/DCコンバーター(昇圧・降圧変換器)、車載モーターなどの試験需要で好調に推移している。
こうした中、富士経済の「EV/PHV向け充電インフラ普及動向」による20年の国内の充電ステーションの設置状況は、公共や職場用を対象にコネクター数(個)ベースで普通充電器が前年比6.0%増の2万7600個、急速充電器が同2.2%増の7835個となった。30年以降には、日中で共同開している次世代超高出力充電規格で最大充電電流600アンペアを見込んでいる「チャデモプロトコル3.0版」の設置が増加すると予想している。35年の設置見込みは普通充電器は20年比41.8%増の3万9130個、急速充電器は同46.1%増の1万1450個と予測した。
(2021/12/24 05:00)