(2022/1/20 05:00)
サステナビリティー(持続可能性)が、アパレル産業の行方に変化をもたらしている。大量生産大量廃棄の市場構造や海外に多くを依存する今の供給体制を見直す時期にきている。
日本産業の黎明(れいめい)期をけん引した繊維産業だが、円高や安価な人件費を求めて海外への生産シフトが続き、今ではアパレル市場における輸入依存度は98%となっている。
一方でファッションのカジュアル化などで売り上げは縮小傾向で、国内アパレルの市場規模は1991年に約15兆円だったのが、2019年には10兆円強にまで低下。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い市場はさらに減少し、在宅勤務の定着もあり、コロナ前の市場規模の回復は困難との指摘も出ている。
構造的な課題も浮上している。シーズンごとに流行を追う提供スタイルが、大量生産大量廃棄を生み出している。海外の原料調達や縫製工程で、強制労働や安全衛生を無視した就労環境を強いられるなど、人権に関わる問題も多数発生している。
日本のアパレル企業が、海外に長く伸びたサプライチェーン全体を管理するのは困難で、一部に国内生産に回帰する動きも見られるようになってきた。大手アパレルは衣料のリサイクルにも取り組みだした。
消費者の意識にも変化が見られ、高品質な製品を長く使い続けたいというニーズも高まっている。アパレル産業に関わる中小企業にも変化は及んでいる。
縫製受託を手がけるニィニ(埼玉県蕨市)は「捨てないアパレル」を掲げ、客が持ち込んだ着物や毛皮などを材料として、新しい衣料品に生まれ変わらせるアップサイクル型ビジネスで成長している。クリーニング業のハッピー(京都府宇治市)は、独自の「ケアメンテ」技術で、汚れて着られなくなった服を再生するサービスを提供し、顧客獲得に成功している。
衰退の一途をたどるアパレル関連産業を復活させる上でサステナビリティーが大きなカギを握るのは間違いない。消費者を巻き込み、衣料の価値を高める取り組みを加速させてほしい。
(2022/1/20 05:00)
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