(2022/4/5 05:00)
東京証券取引所の再編は、非上場の中小企業にも新たな対応を迫っている。プライム市場の上場企業は、気候変動に関する情報開示を義務付けられており、サプライチェーン(供給網)を構成する中小企業も脱炭素の数値目標の達成を求められ始めている。供給網全体の脱炭素のカギを握る中小企業の積極的な取り組みが期待される。
東証は市場再編に先立つ2021年6月、コーポレートガバナンス・コードを改訂した。サステナビリティー(持続可能性)に関する取り組みと適切な開示を求めた内容で、プライム上場企業には気候変動が事業に及ぼす影響の開示を求めている。
気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に沿った開示が必要であり、自社のみならず供給網を構成する取引企業の脱炭素の管理も求められてくる。例えば、トヨタ自動車は21年に二酸化炭素(CO2)排出量を前年比で3%削減するよう部品会社に求めており、こうした数値管理などが必要になる。
ただ中小企業の間では、自社の排出量を把握できていない企業が少なくない。どのように排出量を測定するのか、測定した数値が発注企業の要求を満たさなかった場合の対策をいかに講じるのか、人材やノウハウの不足もあって頭の痛い課題だ。とはいえ対策を怠れば、受注活動に悪い影響が及びかねない。
こうした中小企業は政府や団体、金融機関などに相談し、ノウハウを吸収することから始めたい。中小企業基盤整備機構は相談窓口を設け、専門家によるアドバイスも行っている。商工中金はCO2排出量を可視化する測定サービスを展開し、三菱UFJ銀行と東京海上日動火災保険は中小企業向け気候変動対策で業務提携することをこのほど発表した。排出量の測定や気候変動リスクを洗い出すサービス提供などを想定している。
50年のカーボンニュートラル達成に向け、中小企業も例外なく環境対策が求められてくる。取り組みに意欲的な企業を発注側が選別しつつあることに中小企業は留意する必要がある。
(2022/4/5 05:00)