(2022/4/6 05:00)
ロシア軍撤退後に、ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊ブチャで露見した惨状に言葉を失う。欧米はロシアへの追加経済制裁を検討するが、欧州連合(EU)はロシア産の天然ガス・石油への依存度が高く、一定の覚悟がなければ効果は限られる。日米欧は効果的な追加制裁はもとより、中国やインドを通じた制裁逃れ封じ、ウクライナへの人道支援も含めた一段の結束強化が求められる。
ロシアに対するこれまでの主要な経済制裁として、国際銀行間通信協会(SWIFT)からのロシア金融機関の除外、ロシア中央銀行の資産凍結、ロシアとの輸出入規制、最恵国待遇の撤回、ロシア富裕層の資産凍結などを講じてきた。
加えて先の先進7カ国(G7)首脳会談では、ロシア中央銀行による純金取引を規制し、金を売ってルーブルを買い支える手法を防ぐことなども決めた。暗号資産による制裁逃れへの規制も含め、各国中央銀行の対応を急ぎたい。
ロシアの制裁逃れでカギを握るのがインドと中国。武器の半分をロシアからの輸入に頼るインドは、一方で日米豪印の4カ国(クアッド)の構成国。ロシアはインドへの原油輸出などに期待感を示し、インドは玉虫色の全方位外交を掲げ、欧米は警戒感を強めている。ロシア寄りとの国際批判を避けたい中国は、国境問題を抱えながらも中立を掲げるインドに接近する。G7はインド、中国へのけん制も間断なく継続する必要がある。
G7はウクライナが求める戦車・戦闘機の提供や、ロシアからの全面的な燃料の禁輸など、踏み込んだ制裁は行っていない。ロシアとの交戦に直結するリスクがあるほか、天然ガスの4割・原油の3割をロシアに依存するEUは制裁の反動が大きい。産油国は増産要請に慎重姿勢を崩さず、国際エネルギー機関(IEA)加盟国が協調して石油備蓄を放出しても、ロシア産を賄う量を確保できない。
G7は中印および産油国と粘り強く対話を続け、ロシアに強力な追加制裁を科せる体制固めで停戦の着地点を模索したい。
(2022/4/6 05:00)
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