(2022/4/4 05:00)
東京証券取引所が4日、4市場から3市場に再編される。最上位のプライム市場には東証1部上場企業の8割超が移行するため、当面は代わり映えがしない。上場企業は技術革新と人材投資を進めて企業価値を向上させる一方、東証は上場企業の事業計画を厳格に点検し、世界から投資を呼び込める魅力ある市場に再生してもらいたい。
世界の株式時価総額ランキングを時系列でみると、バブル期の1989年は上位50社中32社の日本企業がランクインしていたのに対し、2022年1月時点ではトヨタ自動車1社のみ。世界の投資家は企業統治や収益で海外に見劣りする日本株に魅力を感じなくなっていった。東証1部の上場基準も緩かったため、時価総額30兆円超の大企業から数十億円の地方銀行までが混在し、海外からは最上位市場の位置づけが曖昧で投資しにくく映ってもいた。
最上位のプライムへの上場基準は、流通株式の時価総額100億円以上(東証1部は10億円以上)、発行株に占める流通株式の比率35%以上(同5%以上)と厳しくなった。だが「当分の間」は基準が未達でも、基準達成に向けた事業計画書を提出すれば上場できる経過措置を設定したため、1部上場の300社近い未達企業がプライムに移行する。東証は経過措置期間の明確化や、事業計画の進ちょくを促すことで名実ともに再編を果たしてもらいたい。
プライム市場では、気候変動による影響の開示や英語による財務情報の開示、取締役の3分の1以上を独立社外取締役にすることなども求められる。上場企業自らが、海外投資家が求めるこれら要望に積極的に取り組むことで、投資対象としての魅力を高めていきたい。
東証株価指数(TOPIX)は当面、東証1部上場企業の全銘柄が対象となるが、段階的に選別され、25年1月以降は「流通株式の時価総額100億円以上」の基準未達企業は除外される。除外となれば事業や採用活動などにも影響が及びかねない。今回の東証再編を企業価値向上に向けた第一歩としたい。
(2022/4/4 05:00)