(2022/5/16 05:00)
洋上風力発電の産業形成に向けた取り組みが具体化してきた。脱炭素化やエネルギー安全保障への貢献にとどまらず、製造業の活性化や地方創生をけん引する主力産業に育てたい。
三菱商事を中心とする企業連合は銚子市沖で6年後の発電開始を目指している。千葉県は18日に説明会を開き、建設工事や部品製造、設備管理などに携わる県内企業の参入を促す。
今夏には九州大学の主導でコンソーシアムが始動し、産学官が連携して産業形成を進める。日本の過酷な風況に耐える性能と価格競争力に優れた次世代風車の実用化を視野に入れる。
日本の主要風車メーカーは投資予見性が立たず2019年にほぼ撤退。国内市場は海外勢の独壇場となった。だが20年に官民で洋上風力発電量の導入目標(30年までに10ギガワット、40年までに30ギガ-45ギガワット)を設定すると風向きは産業形成へと変わる。
海外製への依存度の高さは電力の安定供給面で課題がある。厳しい気象条件の下で海外製が性能を維持できるとは限らない。国際的な緊張が高まれば補修部品の入手が滞るなど安全保障上のリスクも抱えている。
経済波及効果は限定的なものにとどまる可能性が高い。海外メーカーは自前のサプライチェーン(供給網)を伴って日本に進出しているため、国内の部品・部材メーカーにとって参入のハードルは高そうだ。風車の国産化は産業形成に欠かせない。
当面はプロジェクトやマネジメント、保守を担う専門人材の育成など産業形成の環境整備を急ぐ必要がある。資源エネルギー庁は22年度に「洋上風力発電人材育成事業」を新設し、教育機関や企業の支援に着手する。
国産化の成否がかかる浮体式風車の開発では、アジア市場への展開も見据え、耐久性と価格競争力の両立が必須条件になる。太陽光パネルは品質への過剰なこだわりからコスト高になり、海外製に技術で勝ってビジネスで負ける辛酸をなめた。
洋上風力産業の形成は製造業や地方経済を元気にする数少ない好機といえる。太陽光発電と同じ轍(てつ)を踏んではならない。。
(2022/5/16 05:00)