(2022/5/17 05:00)
物価上昇が止まらない。日銀が16日発表した4月の国内企業物価指数は前年同月比で10%上昇し、比較可能な1981年1月以降で過去最大の上昇率となった。価格転嫁も徐々に進み、全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)も4月に2%前後の高水準が見込まれ、22年春闘の賃上げ分が相殺されかねない。
産業界は一段の事業効率化や省エネ、政府は視野に入れる第2弾の経済対策で財政規律の順守が求められる。
ウクライナ情勢に伴うエネルギー・穀物・木材など商品市況の上昇や世界経済のコロナ禍からの回復、さらに円安が企業物価を大きく押し上げている。原材料やエネルギーコストの上昇分は一部が価格転嫁され、総務省が20日に発表する4月の全国消費者物価指数の上昇率も日銀が掲げる2%目標が視野に入るほど引き上がる見通しだ。
4月から携帯電話通信料引き下げの影響が剝落するほか、電気・ガス代や飲食料品、外食、日用生活品、運賃、家電製品など“値上げラッシュ”が家計に押し寄せる。企業にとどまらず、家計の消費マインドをさらに冷やしかねないことが心配だ。連合がまとめた22年春闘の第5回回答集計結果によると、賃金上昇率は2・10%、うち中小企業は2・02%で、消費者物価の上昇率とほぼ同水準にとどまっている。
産業界でも、円安の恩恵を受けていない内需主導型企業、中でも中小企業の今後が懸念される。実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済が年末に向けて本格化する。コロナ禍にも見舞われる中、返済原資を円滑に確保できるのか、あるいは確保できても過剰債務がさらに膨らむ悪循環に陥りかねない。
岸田文雄政権は事業規模13兆円の総合緊急対策を第1弾とし、6月までに策定する新しい資本主義の実行計画と“骨太方針”の具体策を第2弾の経済対策と位置付けている。自民党内には今夏の参院選後、22年度2次補正予算案の編成を求める声がある。費用対効果を重視し、財政規律を順守した経済運営を行うよう求めたい。
(2022/5/17 05:00)
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