(2022/11/21 05:00)
約3年ぶりに対面で行われた17日の日中首脳会談は、安全保障分野での意思疎通を強化し、建設的・安定的な日中関係の構築を目指すことで一致した。この会談を起点に、日中は新たな共存・互恵の道を模索したい。ただ中国は台湾統一に向けて武力行使も辞さない強硬姿勢を崩していない。日本は「対立」と「協力」のバランスを保ちながら隣国・中国と向き合いたい。
岸田文雄首相は尖閣諸島周辺での中国軍の活動や弾道ミサイルの発射に「深刻な懸念」を表明した。中国の軍事演習で弾道ミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)に落下し、台湾有事が日本の安全保障に直結することが突き付けられていた。今回の首脳会談で、安保分野での意思疎通強化で一致したことは日本にとり一歩前進と言える。
ロシアがウクライナで核兵器を使用することを許さないとの見解でも両国は一致しており、習近平国家主席の表明が抑止効果を発揮すると期待したい。また日中は「日中ハイレベル経済対話」「日中人的・文化交流対話」の早期開催でも合意。経済安全保障に抵触しない分野で、新たな互恵関係を築く再出発とすることが両国に求められる。
他方、習氏は会談で台湾問題について「中国の内政への干渉は認めない」と強硬姿勢を貫く。米中首脳会談でも台湾問題を「核心的利益の核心」とレッドライン(越えてはならない一線)であることを鮮明にした。両国が安保分野で意思疎通を強化し、仮に偶発的な衝突を回避できたとしても、中国にとって祖国統一が国家目標であることに変わりはない。習氏が異例の3期目入りしたのは自身の手で台湾統一を実現する狙いがあることを忘れてはならない。
14日の米中首脳会談でも、両国は関係改善に意欲を示しながら台湾問題では深い溝があらためて示された。ただ米中も日中と同様、対話の継続で一致しており、緊張緩和に向けたスタートラインに立つことはできた。台湾情勢で最悪の事態を回避しつつ、日米は中国と新たな関係を構築できるのか、中国の今後の動向を慎重に見極めたい。
(2022/11/21 05:00)