(2022/12/30 05:00)
世界経済の先行きを警戒しながらの越年となる。ウクライナ情勢に収束の兆しはなく、米国はインフレと金融引き締めの長期化、中国は不動産危機と急拡大するコロナ禍が成長の足かせとなる。2023年も地政学リスクとコロナ禍、主要国経済指標を注視しながらの難しい経済運営が日本政府に求められる。
米連邦準備制度理事会(FRB)は14日の会合で、政策金利の利上げ幅を0・75%から0・5%に縮小し、自国および世界の景気に配慮した政策に修正した。ただ政策金利の最終到達点を4・6%から5・1%に引き上げた点に懸念を残した。小幅な利上げが積もり積もって高金利が長期化する可能性を拭えない。11月の消費者物価指数は前年同月比7・1%上昇と前月(7・7%上昇)から改善したものの、懸案の人手不足による賃金上昇を移民流入などでどこまで対処できるかは不透明だ。
米中間選挙で共和党が下院で過半の議席を獲得し、ねじれ議会となったことも経済の先行きには懸念材料になる。経済対策の財政出動が制約されたり、ウクライナに対する軍事支援の縮小を迫られる可能性がある。ウクライナのゼレンスキー大統領が21日に米議会で演説し、共和党に支援の理解を求める事態に至っている。議会は超党派で経済に目配りし、ウクライナ支援を継続することが求められる。
ゼロコロナ政策の行動制限が経済を減速させていた中国は、同政策を事実上終了させても経済不安を拭えない。新規感染者の急拡大は春節(旧正月)を経てさらに深刻化する可能性があり、工場稼働率の低下などで再び経済に多大な影響を及ぼしかねない。日米は中国人入国者への新型コロナ検査を義務付けるなど対応に追われている。経済優先に転換した中国経済の先行きはむしろ厳しくなる可能性があると想定しておきたい。
29日の東京株式市場は一時、日経平均株価が約3カ月ぶりに2万6000円の大台を割り込んだ。中国のコロナ禍への警戒感が背景にある。日本は内需に目配りした施策を優先し、23年は堅実な成長を実現したい。
(2022/12/30 05:00)