社説/米議会「ねじれ」に 下院は共和党、政権運営に懸念

(2022/11/18 05:00)

米中間選挙は日本時間17日、野党・共和党が下院で過半の議席を4年ぶりに奪還した。バイデン政権は“ねじれ議会”により制約された政権運営を迫られる。ただ選挙前の予想より民主党は善戦し、上院で過半を維持、下院も獲得議席数は拮抗(きっこう)している。バイデン大統領は共和党との協力も視野に入れており、超党派で世界の安全保障と経済に向き合えるかを注視したい。

選挙戦の争点は歴史的なインフレや中絶の権利、移民問題などだった。大企業への課税強化で格差を是正したい民主党に対し、共和党は減税を要求。人工妊娠中絶の禁止を容認する共和党に対し、民主党は中絶の権利を主張した。共和党が犯罪の温床と見なす移民政策では、民主党は深刻な人手不足の緩和策として寛容な姿勢を示していた。

バイデン大統領は選挙後、共和党と協力しつつも、中絶の禁止や富裕層に対する減税には反対する考えを示していた。だが予算案の先議権などの権限を持つ下院で共和党が過半を占めたことで、大企業への課税強化や薬価引き下げなどを盛り込んだ歳出・歳入法(インフレ抑制法)の修正を求められたり、ウクライナに対する軍事支援の縮小を迫られる可能性もある。

減税はインフレを助長しかねず、ウクライナ支援の減額は世界への誤ったメッセージともなりかねない。ウクライナ支援の各国の結束を乱しかねない施策には慎重な対応を求めたい。バイデン大統領は拒否権も視野に政権運営するとみられるが、共和党の協力を得つつ円滑な議会運営を行えるかが焦点になる。

バイデン政権にとって懸案の一つはトランプ前大統領の存在だろう。次期大統領選への出馬を表明したトランプ氏にけん引される形で共和党が議会の混乱要因となるのか、あるいは共和党は中間選挙で苦戦した要因をトランプ氏と位置付け、米国社会の分断を助長する同氏との距離を置く動きが党内で広がるのか。トランプ氏の影響力低下が指摘される中、与野党は米国社会の分断の解消と国際秩序の再構築に向け、建設的な議会審議に臨むことを期待したい。

(2022/11/18 05:00)

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