カーボンニュートラルへ、予測・最適化AIのいかし方【PR】

(2022/12/5 10:00)

 2022年、再生可能エネルギーを取り巻く環境が大きく変わった。4月以降に新設された「メガソーラー」と呼ばれる1,000キロワット以上の出力がある発電所は、固定価格で電力を買い取ってもらえる「FIT(Feed-in Tariff)」制度の対象外になり、自由取引の「FIP(Feed-in-Premium)」制度が新たに適応されるようになった。再エネは普及期から自立期へと階段を上り始めた。一方、発電事業者は難しい選択を求められる。これまでのように電力会社が決まった価格で買い取ってくれないため、自社で事業を安定させなければいけない。ただ、過去から実施している固定買い取り制度からの移行は簡単ではない。そこで、存在感が増しているのが「アグリゲーター」だ。

FIP制度について

―2022年4月から運用がスタートした「FIP制度」は「FIT制度」とどのような違いがあるのでしょうか。

  • 東芝エネルギーシステムズ株式会社 エネルギーアグリゲーション事業部 エネルギーIoT推進部 エキスパート 金子 雄氏

金子

変化は大きく2つあります。FIT制度では再エネは固定価格で買い取ってもらえましたが、FIP制度では市場によって買取価格が変動します。これまでは発電すれば電力会社が買い取ってくれましたが、これからは市場で自由な競争の中で取引されるようになります。つまり、再エネの発電事業者はいくらで誰にどのタイミングで電力を売るかを自らで判断しなければならなくなりました。

 それだけではありません。FIP制度下では、発電事業者は発電量の計画値を電力広域的運営推進機関に事前に申告する必要があります。また、計画値と実績値を一致させるという計画値同時同量の義務が発生するため、計画値と実際の発電量にずれが生じた場合は、調整にかかる費用をペナルティーとして支払わなければなりません。当然、計画と実際の発電量に差が生じないように、正確な発電量の予測が重要になります。蓄電池などを使って、計画にあわせるような工夫も求められるようになります。

  • 東芝エネルギーシステムズ株式会社 エネルギーアグリゲーション事業部 エネルギーIoT推進部 エネルギーIoT第一グループ スペシャリスト 本宮 拓也氏

本宮

再生可能エネルギーのさらなる普及のために、FIP制度下でも再エネ発電事業者が事業継続できることが重要です。とはいえ、発電事業者にとって、こうした対応のハードルは低くありません。そこで頼りになるのが、発電事業者と市場・顧客をつなぐ「アグリゲーター」です。電力をつくる人と買いたい人をつなぐ存在です。再エネをまとめて買って、市場での販売を代行します。

 アグリゲーターの存在によって多くの発電事業者は経済的に自立でき、結果的に再エネの普及、カーボンニュートラルの実現につながります。

 東芝はエネルギー業界で過去より積み上げてきた知見や、実証実験の結果を元に、再エネアグリゲーションサービスを2022年5月から展開しています。発電事業者から電力を買い取り、顧客や卸電力市場などに売電するほか、発電計画の提出なども代行し、再エネ発電事業者の事業収益の安定化に貢献します。

東芝の強み、独自性について

―アグリゲーターが再エネのこれからには欠かせない存在になりそうですね。では、東芝はアグリゲーターとしてどのような強みを発揮できるのでしょうか。

  • 株式会社 東芝 研究開発センター 知能化システム研究所 システムAIラボラトリー フェロー 吉田 琢史氏

吉田

FIP制度下では、正確な発電量予測が重要になります。東芝のハードに関する知見を活かし研究開発している「発電量予測AI」にはアドバンテージがあると考えています。これは物理モデルとAIモデルのハイブリッドな予測モデリング技術です。物理モデルは再エネ機器メーカーとして培った発電システム設計用のシミュレーション技術を活用しています。

 それに加え、「取引戦略AI」の開発も行っています。「取引戦略AI」は、発電量と販売量を一致させること、収益を確保することを共に実現します。取引する日の発電量、市場価格をどれだけ正確に予測し、過去に行った予測と実際のずれを加味して、どれだけ意味のあるシナリオを作るか。再エネ発電も市場価格も揺れ動くものですが、膨大な変数を最適化するのは、東芝の得意技術です。

本宮

また、東芝は蓄電池メーカーでもあります。市場動向を見極めた上での供給量の調整には蓄電池が不可欠で、実際にお客様からのご相談も蓄電池の制御を希望する声が圧倒的に多い状況です。当然、蓄電池についても深い知見を持っており、制御アルゴリズムにも磨きをかけています。蓄電池のデータを収集する仕組みや遠隔制御する技術もあります。これらの活用でインバランス回避や市場取引の収益を向上させられます。

 このようにエネルギーや電力に関するインフラを手がけてきた東芝グループだからこそ持つ技術やノウハウがあります。それに加え、2020年に、世界的なVPP(バーチャル・パワー・プラント)事業者であるネクストクラフトベルケと新会社「東芝ネクストクラフトベルケ」を設立しました。東芝エネルギーシステムズと東芝ネクストクラフトベルケを核にした「再エネアグリゲーションサービス」の展開は、発電事業者に貢献できると考えています。

 また、産業用の太陽光発電所の投資回収期間は10年以上と言われています。一度、提携すれば長期間のお付き合いになりますので、アグリゲーターは企業としての持続性が重要になります。また、技術的にも一朝一夕で提供できるサービスでもありません。長年、幅広い分野で社会インフラを支えてきた東芝グループの強みがいきるはずです。

―今後の取り組みを教えてください。

金子

私たちは供給側だけでなく、需要家たちを束ね、電力の需要を調整するサービスも展開しています。これらのサービスを連携させることで、更なる価値提供につなげていきたいです。さらに、蓄電池があったときに、それを発電側または需要側で適切に利用することで、蓄電池の経済価値を最大化することを目指します。

吉田

「発電量予測AI」は、現在は太陽光発電と陸上風力発電に対応しています。今後は顧客や社会の要望を取り込み、幅広いニーズに応えていきたいです。具体的には、FIPの導入で注目が高まっている「洋上風力発電」やカーボンフリー電源として関心が高い「小水力発電」などにも対応していければと考えています。

 「取引戦略AI」については、現在は再エネ電源をスポット市場・時間前市場にて取引する最適戦略を計算していますが、将来的には、アグリゲーターが保有する火力等調整可能電源や発電側・需要側の蓄電池も合わせて最適戦略を計算し、更に需給調整市場など他の市場にも拡張していくことで、より幅広いアグリゲーション事業のニーズに応えたいと思います。

 日本においてエネルギー問題は大きな課題であり、その課題解決のために再エネは重要な存在です。再エネが普及期から自立期を迎えた今、アグリゲーターの成長こそが電力の構造を大きく変え、カーボンニュートラルや持続可能な社会の実現につながるのではないでしょうか。東芝グループは、再エネアグリゲーションサービスを通じて、再エネの主力電源化の促進に寄与し、長期的な電力の安定供給、また、カーボンニュートラル社会の実現を目指していきます。

(2022/12/5 10:00)

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