(2023/3/30 05:00)
給与のデジタル払いが4月1日から解禁される。企業は銀行口座を介さずに、スマートフォンの決済アプリや電子マネーを利用して給与を振り込めるようになる。キャッシュレス決済化やデジタル化の流れに呼応した施策で、企業は振り込み手数料を削減でき、従業員は資金移動(チャージ)の手間を省ける。関係省庁は利用者保護の制度設計を実際の運用でも厳格に機能させ、デジタル給与の安全性と利便性を訴求していきたい。
デジタル給与は「〇〇ペイ」「〇〇払い」といったスマホ決済サービスなどを提供している資金移動業者を介し、従業員のアカウントにデジタルマネーを振り込む仕組み。キャッシュレス決済やフィンテック(金融とITの融合)の推進など、新たな生活様式への対応が期待されるほか、銀行口座を持たない外国人労働者への円滑な給与支払いも可能になる。企業は当面、デジタル払いと銀行振り込みを併用する必要があるが、従業員の多様なニーズに応えたい。
運用に際し、利用者保護の制度設計を労使間で確認したい。資金移動業者は金融庁による利用者保護規制を受け、厚生労働相が確実な支払いを担保する事業者に限って指定する。
資金移動業者が経営破綻したり、利用者がスマホを紛失しても4―6営業日で全額を払い戻す仕組みを有する必要があるほか、月1回は現金自動預払機(ATM)から引き出せ、現金化も1円単位で可能にしなければならない。デジタル給与の振り込みの上限を100万円としたのも利用者保護の一環だ。関係省庁はこれら保護対策を円滑に機能させることで、デジタル給与の安全性を醸成したい。
キャッシュレス決済は人手不足の店舗業務を軽減し、コロナ禍などの感染症対策にもなる。インバウンド(訪日外国人)の利便性向上にもつながる。ポイント還元などのサービスもキャッシュレス化を促している。デジタル給与は企業の3割程度が検討しているとの調査がある。安全性が確認されれば導入企業は広がるとみられ、利便性の良い社会を築いていきたい。
(2023/3/30 05:00)