(2023/5/30 05:00)
6月に開催される株主総会で「株主提案」の件数が過去最高を更新する可能性がある。アクティビスト(物言う株主)や機関投資家が株式価値の向上に向け、自社株買いなどの株主還元を求める提案や取締役の選任、気候変動問題への対策強化などの提案を増やしているとみられる。ただ増加傾向にある自社株買いは財務・株価に及ぼす効果が一時的とされる。企業は持続的な成長に向けた成長戦略や人的投資についても、株主と十分に対話することが求められる。
2022年6月開催の株主総会では、21年の48社を上回る過去最高の77社(三菱UFJ信託銀行調べ)で株主提案が行われた。23年は22年を上回る可能性があり、企業と株主との建設的な対話が増えるか注視したい。
今回の株主提案の焦点の一つが、自社株買いなどの株主還元策の行方だ。総会を待たずにすでに表明している企業も多く、バブル後最高値を更新する株高につながっている。株高自体は歓迎だが、企業は株主以外の従業員や取引先といったステークホルダー(利害関係者)にも目配りしたコーポレートガバナンス(企業統治)を実現したい。
企業が自社株買いに動くのは、東京証券取引所が資本効率の向上を促していることが背景にある。東証プライム市場銘柄の約半数の株価純資産倍率(PBR)が1倍を割り、株価が企業価値より割安な状況にある。これを1倍超に引き上げることで、資本収益性で海外に見劣りする日本株の魅力を向上させるという考え方は適切だ。
ただ自社株買いによるPBRと株価への効果は短期にとどまる可能性がある。対処療法で財務指標が改善しても持続的な成長につながらなければ元も子もない。企業は中長期の視点で生産性向上に資する人的投資や脱炭素などの社会課題に目配りしていることも株主に訴えたい。
日本取引所グループによると、23年の株主総会の最集中日は6月29日で、集中率は26・4%。22年の26・0%に続く低水準となる。24年は開催日の分散をさらに進め、株主との対話の機会も増やしてもらいたい。
(2023/5/30 05:00)
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